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メトラ村の上空を飛ぶ

 ノーチェに頼んで、クリストフェルさんを再度連れてきてもらうことにした。

 その間に、僕は一人で竜を観察することにした。


 紫色の鱗を一枚はがして鑑定してみる。

 手が少し痺れる感じがする。


……………………………………

青竜の鱗【素材】 レア度:★×5


ブルードラゴンが持つ青い鱗。

魔法に対して強い耐性を持つ。

……………………………………


 ブルードラゴンという種族らしい。

 でも、この色は青ではないよな。


 それにしても、でかい。翼竜よりもでかい。

 もしもこれを僕が倒していたのなら、これを食べるだけで次の種族に確実に進化できるだろう。

 だが、捕食はあくまでも僕が倒した魔物を食べないと効果が出ない。

 こいつを食べて経験値が得られるとしたら、それは悪食の効果によるものだろう。


 思い出すのは、ブラックシャークだったころ、たこ足を食べて成長した時のことだ。

 あの時はたこ足を食べただけで(当時の僕にとっては)莫大な経験値を得ることができた。


 変色して、明らかに体に良くない成分が含まれているだろう鱗を見る。

 消化促進のおかげで食べ物の状態異常は時間経過で解除できるようにはなっているが……。


 ええい、ままよ!


 僕はその鱗を一枚食べた。


【スキル:“悪食”の効果により経験値7獲得。次レベルまで残り経験値29420】


 と同時に、気分が非常に悪くなり、僕はその場に倒れてしまった。


 ステータスを確認すると、案の定猛毒になっている。


「キュア」


 猛毒持ちの称号はすでに取得しているので、回復魔法で治療。

 んー、鱗の数はかなり多いし、肉なども食べきればもっと経験値が手に入るかもしれないが、僕の今のHPで猛毒状態に長い間いるのは危険が伴う。ここはおとなしく断念しよう。


 しばらくすると、ノーチェが戻ってきた。 

 クリストフェルさんは到着すると、その巨大な竜を見上げ、


「これは……本当にこんな巨大な竜が湖の底に?」


 と信じられないという口調で言った。

 その間に、僕は念話でノーチェに、この竜の種族名を伝え、今後どうしたらいいかも伝えた。


「ブルードラゴンという種族の竜だそうです。はい。湖の毒で死んだのか、もしくはこの竜が毒の原因なのかはわかりません。一度、専門家に見てもらったほうがいいでしょうが、この竜が毒素を放っている可能性を考えると、竜をどこか人のこない谷底にでも処分したほうがいいかもしれません」

「そうですね。あの、この竜は、そちらのベビードラゴンさんが引き上げたのですか?」

「はい、ヴィンデさんが引き上げました」

「そうですか。ならば、別途報酬を差し上げます、どうかこの竜を人のこない西の谷底にまで運んではもらえないでしょうか? 本来なら誰かに見てもらい、竜の死の原因を特定するのが先決なのでしょうが――それだけの時間と費用は我々にはもう残っていないのです」


 クリストフェルさんが辛そうに呟く。

 ノーチェに『処分だけなら無料でいいよ、アイテムBOXに入れるだけだし。それと、湖の浄化作業、中途半端な状態で終わらせたくないから、村に泊まらせてもらうように頼んでよ』と告げると、ノーチェも賛成のようで、クリストフェルさんに話してもらった。


 湖を浄化できるなら、それに越したことはないとクリストフェルさんは喜んでくれたが、彼も湖の水を全て浄化できるとは思っていないんだろうな、笑顔が少しぎこちない。


 二人が村に去って、時間を見計らい、僕はブルードラゴンの死骸をアイテムBOXに収納して、怪しまれないように時間調整のためお昼寝をしてから村に戻った。


 アイテムBOXって本当に便利だなぁ。

 アイテムBOXを手に入れるきっかけをくれたアトラスに今度会ったら、改めて礼を言おう。


 夕方になり、お昼寝を終えた僕は、優雅に空を飛んで村へと帰った。


 空から見ると、本当にこのあたりは草が一本も生えていないな。

 これも毒の影響か。


 湖の水を浄化したら引っ越す必要がなくなる、なんて思っていたけど、この分だと土壌汚染がかなり進んでいる。

 人が住めるようになるまで、何年――いや、何十年かかるかわからない。


 明らかに僕の解決できる範疇を越えている。


 村の上空手前で降下を始め、村長宅の前で着地に成功する。

 僕が旅客機だったら、シートベルト着用ランプが消灯する頃だろう。


 あれ? 索敵でもノーチェの気配が家の中から感じない。どこにいるんだ?

 索敵範囲を広げてみる。


 んー、お、あった。


 あっちだな。

 僕は上昇し、ノーチェのいる方向に向かう。

 村の外れ、民家も何もない場所になんで? と思ったら、そこは墓地だった。


 そして、あるお墓の前にノーチェとクリストフェルがいた。

 もしかして、クリストフェル、僕がいないことをいいことに、人気のいない墓場でノーチェに悪戯を……なんて雰囲気じゃないな。


『ノーチェ、何してるの?』


 念話を送ると、ノーチェは僕に気付き振り返り、お墓を僕に見せた。


 でも、なんでお墓?


 僕がゆっくり浮いて近付くと、


【メトラ村代27代村長ジルダ、ここに眠る】


 手紙の受取人がここに眠っていた。

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