海に到着! なのにいきなり状態異常
川幅が広くなってきた。
そして、川も深くなる。
そして、ある程度きたところで、僕は気付いた。
水が……塩水になった。
海だぁぁぁぁっ!
横を見ると、ここは港町なのか、船底が見える。
とりあえず、人目を避けるように僕は沖へと向かった。
ううん、海に来たら舌が塩で痺れるかと思ったけど、そんなことはなかった。
やっぱり、鮫だから海水に対応しているんだな。
さて、索敵で食べ物を探すか。
ん? 海底に何かがいるのか? 砂しか見えない。
もしかして、砂の中に何かが?
僕は目を凝らした。
【ギフトエイ HP:12/12】
ギフト?
プレゼントか、確かに隠れているのにバレバレのエイって、僕にとってはプレゼントだな。
では、いただきます!
僕は砂ごとエイを食べようとした。
いたっ、エイがおっぽで突き刺してきた。
大丈夫、痛いけど大怪我じゃない。食べる!
【経験値6獲得】
【スキル:“捕食”の効果により経験値9獲得】
【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】
よし、とりあえずステータスを確認。
……………………………………
名前:ヴィンデ
種族:ブラックリトルシャーク
レベル:4
HP 29/29
MP 22/22
状態:記憶喪失 毒
スキルポイント6
攻撃 27
防御 22
速度 26
魔力 14
幸運 27
経験値補正+10%
スキル:【捕食:Lv2】【言語理解:Lv1】【叡智:Lv2】【ステータス把握:Lv2】【スキル鑑定:Lv2】【索敵:Lv1】【泡:Lv1】【献身:Lv1】【硬い鱗:Lv1】【鋭い歯:Lv1】【肺呼吸:Lv1】【土魔法:Lv1】【鮫肌:Lv1】【HP自動回復:Lv1】【忠義:Lv1】
称号:【転生者】【異世界魚】【記憶喪失】【捕食者】【蟹の天敵】【子持ち】【子沢山】【スキル収集家見習い】【魔術師】【出世魚】【称号収集家見習い】【ハートブレイク】【ネームドモンスター】
……………………………………
え? 毒!?
状態に、記憶喪失にさらに毒が加わっている。
ぐっ、HPが減った。
あれ? 減ったHPが戻った。
あ、またHPが減った。あ、戻った。
そうか、毒とHP自動回復が打ち消し合ってるのか。
で、毒ってどうやって回復するんだ?
血清ができるのを待つのがいいのか、それとも毒消し草を食べるのがいいのか、もしくは教会に行けばいいのか。
……とりあえず、レベルが上がっても回復していないところを見ると、何か対策を考えた方がいいかもしれないな。
解毒系のスキルを手に入れるか、耐毒系のスキルを手に入れるか。
ちなみに、HPが増えたり減ったりするルーチンワークは、かれこれ10回は繰り返されている。
もしもHP自動回復がなかったら、HPの1/3が失われていたことになり、僕は焦っただろう。そういう意味では、今はまだ余裕がある。
スキルポイントに頼るのは最後の手段にしよう。
まずは――称号によるスキル獲得を目指すか。
例えば、僕は蟹を食べ続けたら、泡というスキルを手に入れた。
ならば、エイを食べ続けたら、エイに関するスキル、毒関係のスキルを覚えるかもしれない。
よし、食べるぞ!
と思ったけど、エイはあんまりいなかった。
とりあえず、大きな貝を3匹、魚を1匹食べたけれど。
んー、どうしたらいいのか。
そう思った時だった。
【称号:毒持ちを取得した】
【スキル:毒攻撃を取得した】
お、ずっと毒状態でいたからか、称号とスキルを取得した。
でも、目当てのスキルじゃない。何故なら、状態は毒のままだし、僕のHPはまだ減って増えてを繰り返している。
根本的な解決法としては、やっぱり毒を消すしかないのか。
さて、どうしようか。
解毒魔法を覚えたい。そう思ったら、
【回復魔法を取得するにはスキルポイントが足りません】
となる。スキルポイントが足りない。
さらに、今までのパターンからすると、解毒魔法を覚えるにはレベルを上げないといけないだろう。
なら、毒に耐性を持つのはどうだ?
【スキルポイントを3支払い、毒耐性を取得しますか?】
こっちは取得可能だ。
でも、僕の知る限り、毒耐性というのは、毒になりにくくなる、というもので、毒を治療する、というものではない。
最後に、毒消し効果のある海草を探す、というものだ。
【スキルポイントを5支払い、鑑定を取得しますか?】
これもダメだな。スキル鑑定のように、レベル1だと名前しかわからないだろう。
毒消し草、という名前の草はないと思う。
僕の知る限りそんな名前の草は、「ドクダミ」くらいなものだ。
それならどうすればいい?
他に、根本的な解決にならないが、HP回復のレベルを上げることだろう。
でも、レベルアップ手段がわからない。
ま、今の僕は海でも強いようだ。
あの時のロッシュクラブが異常だったんだな。
だから、それほど危機感がない。
とりあえず、今は、回復魔法を覚えるために、スキルポイントを貯めるのがいいか。
応用も利くしな。
とりあえず、今はエイを食べよう。
ここは僕の海だぁぁぁっ! ははは……お、獲物の気配が――
ってあれ?
僕は頭上を見上げた。
あぁ、砂の中のエイばかり探していて、頭上がお留守になっていたのか。
さて、何が居るんだろうなぁ?
クラゲかなぁ、魚かなぁ。
タコとかエビとかならいいな。どうやら、ブラックリトルシャークの好物みたいだし。
そう言って見上げたら……そこにいたのは……巨大な鯱だった。
こわ……でかっ! あれ、本当に鯱かっ!?
【カオ・エポラール:HP3500/3500】
ごめんなさい、調子に乗ってました!
なにあれ! 翼竜ほどではないけど、地竜よりもはるかに高いHP。
全長60メートルはある。
怖い、怖いよ。
あ、思い出した!
地球でも、一番大きい動物はシロナガスクジラ……海は危険な生物が多いんじゃないか!
海、怖い……こわいこわいこわい。
早く行ってくれ。
僕は所詮雑魚です。雑魚の魚です。雑魚だけに雑な魚です。
砂の中でがくがくぶるぶる震える僕。
異世界怖い、怖いよ。
お家帰りたいよぉ。
僕は鯱が遠くに行くまで砂の中で怯え続けた。




