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新米冒険者への依頼

 夜。僕はこっそりと宿を抜けた。

 翼が完治したからだ。久しぶりに現在HPと最大HPが一緒になり、ステータスから肉体欠損の状態異常が消えた。


「思ったより早かったな」


 宿の屋根の上から翼の状態を確認する。あの戦いの前と何ら変わりのないその状態に僕は満足した。


 今思えば、ゲノムに売ってもらった竜の首飾りを食べたことによって手に入れた、肉体再生――このスキルがなかったら翼を生やすには、アロエのところにいって治療をしてもらうしか手段がなかったわけだし、そう思うとあいつの世話になってるんだなぁ。

 本当はもっとノーチェと同じ部屋の空気を堪能したかったんだけど、先延ばしにしていたことを今日実行しようと思う。


 郊外にある丘の上に飛ぶ。

 暗視と遠見のスキルのおかげで町の様子も良く見えるな。


 昼間の牧場の牛達ももう寝ている。


 そして、僕はアイテムBOXから、オークの死骸を取り出して――覚悟を決めた。

 幸いというか、キャベツのおかげで僕の中の消化力は上がっているからな。


「……相変わらずまずい」


 とはいえ、命を奪って得る経験値だ。しっかり食べないとな。


【スキル:“捕食”の効果により経験値7800獲得。次レベルまで残り経験値21542】

【スキル:“捕食”の効果により経験値7800獲得。次レベルまで残り経験値13742】

【スキル:“捕食”の効果により経験値7800獲得。次レベルまで残り経験値5942】

【スキル:“捕食”の効果により経験値7930獲得。次レベルまで残り経験値0】

【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】


 4匹食べて、ようやくレベルが上がった。

 HPが一気に32も増えた。ドラゴンの成長率の高さは確かに素晴らしいな。


 飼い犬の称号の分も含めて、今日1日で34のHP増か。

 うん、いい具合に成長している。

 

 とはいえ、今回の目的は僕の成長じゃない。


 経験値貯金は……1251ポイント溜まってる。

 よし、戻るか。


 僕は翼を羽ばたかせ、宿へと戻って行き、開けてあった窓から室内に入ったのだが、


「あれ、ノーチェ、起きてたの?」

「目を覚ましたらヴィンデさんがいなかったので。どこに行ってたんですか?」

「ちょっと経験値を稼ぎに。本当は明日にしようと思ってたんだけど、ちょうどいいや」


【スキル:経験値贈与を使用し、主人:ノーチェに経験値1000を贈与しますか?】


 あぁ、経験値贈与のレベルが1だったら、一日に1000しか経験値を贈与できないのか。

 もちろん、YESだ。


 …………あ、そうか。

 僕のレベルじゃないからノーチェのレベルが上がっても叡智さんは反応しないのか。


 ステータス把握でノーチェのステータスを確認する


……………………………………

名前:ノーチェ

種族:エルフ

レベル:8


HP 22/51

MP 20/49

状態:通常

スキルポイント14


攻撃 21

防御 19

速度 16

魔力 24

幸運 30


スキル:【弓術:Lv1】【風魔法:Lv1】【君主:Lv2】【回復魔法:Lv1】


称号:【魔術師】【支配者】【癒し手】【冒険者】

……………………………………


 お、いっきにレベル6も上がってる。

 そういえば、エルフって進化できるのかな?


 魔物じゃないから無理なのかな。


 とはいえ、成長率はやっぱりあんまり高くないな。

 んー、やっぱりスキル50個とか称号50個をノーチェにも集めてもらうか。

 スキルだけでいいのなら、スキルポイント50……いや、すでに4つスキルがあるんだし、火魔法、水魔法、土魔法、探知魔法の4つは魔法書を作れば覚えらえるから、残りは42個か。

 ただ、スキルポイント1で入手できるのは、正直微妙なものも多いからなぁ。


「あの……ヴィンデさん、何がちょうどいいんですか?」


 おっと、ノーチェに説明してなかった。


「あ、うん。ノーチェのレベル6アップして、HPも倍以上になったよ」

「え? でもどうして?」

「経験値貯金ってスキルと、経験値贈与ってスキルがあってね、経験値貯金で貯めた経験値を誰かに送ることができるんだ。あと、変身スキルってスキルもあって、蟹とか蟻とか蜂とかに変身できたんだけど、当分使えないからさ、ならノーチェに使おうって思って。レベルが低い間はレベルが上がりやすいし」

「そんなことができるんですか……聞いたことがありませんでした。ありがとうございます」


 ノーチェは笑顔で言うと、「でも……」と少し寂しそうに言った。


「勝手にどこかに行かないでくださいね。不安になりますから」

「うん、わかったよ」


 本当はオ―クを食べてる姿をノーチェに見られたくなかったからなんだけど、ちゃんと断ってから行くべきだったと反省した。


 翌日、朝食として出されたのは硬い黒パン2つだった。もしもブラックバスとして生まれ変わる前の僕だったら、こんな硬いパンなんて、とか思っていただろうが、オークの骨まで食べ尽くす僕にとっては十分ごちそうだ。

 ちなみに、ノーチェが昨日のうちに宿屋の受付に、僕の食事はノーチェと同じモノを出すように頼んでくれていたらしい。

 無茶な注文かと思ったが、実はそういう客は他にも多いらしい。


 そして、朝食後、僕は久しぶりに飛んで移動していた。

 んー、ベビードラゴンになる前は飛んで移動なんて絶対に疲れるだけだろうと思っていたが、そんなことはない、とても楽だ。

 飛行補助のスキルがあるおかげかもしれないな。


 とはいえ、ギルドは宿屋の隣。

 すぐに目的地に到着、流石に建物の中で飛び回ったら迷惑なので歩いていくことに。


 ギルドの営業時間は通常9時から21時まで。

 宿を出るときに9時を告げる鐘が鳴ったので、今は朝の9時を過ぎたばかりだ。


 そして、宿屋の中は人と魔物で溢れかえっていた。


「そういえば、昔、冒険者の手記って本を読んだことがあるんですけど、開店直後のギルドは依頼の取り合いで混雑するって読んだことがあります」

『なるほどな……』


 念話を送り、僕は頷いた。

 受付は3つあって、どこも長蛇の列になっている。この町ってこんなに冒険者がいたんだ。

 出直したいところだが、乗合竜車の時間が10時だからなぁ。

 でも、並んでいて間に合うのかな。依頼の詳しい内容も聞かないといけないし。


「あ、ノーチェちゃん! こっち、こっちに来て!」

「え?」


 声のした方を見ると、何故かそこだけ列がない。

 カウンターの上に札が掛けられており、「指定依頼専用窓口」と書かれていた。


 あぁ、ギルドからの指定の依頼はそこで受けたらいいのか。


 そして、受付の席に座っていたのはペアトリスだった。


「おはようございます、ペアトリスさん」

「おはようございます、ノーチェさん、ヴィンデさん」


 あれ、昨日はノーチェちゃんって呼んでいた気がするが。

 あぁ、仕事とプライベートは使い分ける人なのかな。


「ここに来たってことは、依頼をうけてくれるのね」

「はい。手紙の配達と、力のいるお仕事でしたっけ?」

「そうよ。手紙の配達は、メトラ村のジルダさん。受け取ってもらったらここにサインをもらってきてね。サインを忘れたりしたら、依頼は失敗、違約金が発生するから。詳しいこともこの紙に書いてあるわよ」


 ペアトリスが紙を見せた。

 期日や依頼内容、失敗時の罰金などいろいろと書いている。

 あれ? 差出人がペアトリスになってるな。


「この依頼の依頼主、お婆さんじゃないんですか?」

「あぁ、うん。フェベさん……昨日亡くなったお婆さんの遺品を整理したんだけど、この手紙に、何かフェベさんの強い念みたいなものを感じまして。一応、支部長の許可を貰って依頼を出すことにしたんです」


 強い念?


 もしかして……、いや、あり得るのかもな。


「あと、これがもう一つ、メトラの村からの依頼書です」


 ペアトリスが出したのは、別の依頼書。


 依頼内容は……引っ越しのお手伝い?


「村人全員が引っ越しすることになったから、荷物を運ぶお手伝いよ」


 依頼内容を確認する。

 このあたりはアイテムBOXがあるから簡単にできるな。


 手紙の配達に引越しの手伝い。

 まぁ、新米冒険者にはちょうどいい仕事だな。

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