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ノーチェの弓

 冒険者ギルドのある町とあって、武器や防具の種類も多い。とりわけ、鞭の品ぞろえが多い気がするが……ノーチェに鞭は似合わないな。振るってほしいと思わない、思わないよ、たぶん。

 とりあえずは、ギルド直営の店に行ったのだが、


「あの、弓ってここにある商品だけでしょうか?」

「お嬢ちゃん、弓が欲しいのかい? ここにある物だけだよ。買うならここのウッドボウがお勧めだよ、軽いし持ち運びにも便利、今なら木の矢20本と矢筒もついて銀貨1枚銅貨50枚のところ、お嬢ちゃんは可愛いから特別に銀貨1枚にまけてあげるよ」


 と言われた。安いのは安いんだが武器は命を預かるものだしな。


『ノーチェ、ちょっと誰もいない場所に移動してほしい』

「すみません、他の店を見てからまた来ます」


 ノーチェは頭を下げて店を去り、そして誰もいない場所に移動してくれた。

 そして、


「今からちょっと知り合いを呼ぶから。変な奴だけど、悪いやつじゃないんだけどね。むかついたら、一発くらいなら殴っていいから。じゃあ、行くよ!」


 そして、僕は買い物スキルを発動した。

 と同時に、周囲の時間が止まり、煙の中から、ゲノムが現れた。


「やぁ、今日はいきなり殴ってこないのかい?」

「ノーチェの前で僕のことを通り魔みたいに言うな。ノーチェ、こいつが僕の知り合い、前に話したけど僕の――」


『あぁ、ヴィンデくん、彼女には僕が君の世界の神だってことは黙っておいてよ。どうやら、君のいる世界は神様は一人しかいないらしくてさ、異界の神なんて言ったら反応に困るだろうし』


 なるほど、確かに、ノーチェがゲノムを崇める姿は見ていて面白いものじゃないしな。


「こいつは悪徳商人だ。気を遣わなくていいから」

「ひどいなぁ、君は。でも、本当に気を遣わなくていいよ。僕とヴィンデくんとは友達みたいなもんだし」

「そうなんですか、ヴィンデさんがいつもお世話になっています」


 なってない、なってない。


「ところで、ゲノム。弓矢が欲しいんだけど、彼女が使う分。いいものある?」

「弓矢だね。これなんてどうだい?」


 そういって、ポンっとゲノムが出したのは、弓だった。矢はついていない。

 白色の弓で、天使の羽のようなものが握りの上部、藤頭あたりについている。


……………………………………

光の弓【魔弓】 レア度:★×5


弦を引くと魔法の矢が現れる魔弓。

魔力に応じて攻撃力が変わる。

……………………………………


 矢のいらない弓か。

 へぇ、ゲノムにしてはいい物を出すじゃないか。


「いくらだ?」

「金貨300枚でいいよ」


 ぐっ、高いな。

 一度アイテムを換金したほうがいいかもしれない。


「300枚!? そんなに高いんですか?」

「……あぁ、そうか、ノーチェちゃんが使うんだね。なら、金貨3枚でいいや」


 おい、いきなり1/100かよ。

 ぶっちゃけ、僕なら金貨300枚出してもいいかと思っていたのに。


「ゲノム、僕相手なら本気で金貨300枚で売るつもりだっただろ」


 貨幣貯金のスキルで金貨3枚を引き出し、支払いを済ませつつ僕は半眼でゲノムを睨む。


「いや、あのね、この光の弓、本当に貴重な素材を使ってるから金貨300枚でも安いんだよ? ただ、ちょっと前に金貨1000枚以上の臨時収入が入ったからサービスサービス」

「その臨時収入は明らかに僕の支出だろうが……まぁいい。MPを消費するのは難点だけど、矢が必要ないのはいいな。デザインもかわいいし。いい買い物ができたな。でも、魔弓なんて使って目立たないか?」

「うん、まぁ魔弓そのものは高価だけど、誰も持っていないってことはないはずだし、使っていても二つ名で呼ばれるくらいじゃない? 天使の魔弓使いノーチェ、みたいな感じで」

「おお、いいな。天使ってところが特にいい」

「少し恥ずかしいです」

「まぁ、竜の曲芸師ノーチェのほうが先かも」

「僕は猿回しの猿かよ」


 空の曲芸師の称号を持っているから、あながち間違っていないのが困りものだ。


「じゃあ、お幸せにね!」


 ゲノムは商品を売ると、そんなことを言って消えていった。


「いい人でしたね」

「あぁ、相変わらずふざけた奴だけどな」

「もう、ヴィンデさん、友達の悪口を言ったらダメですよ」


 うっ、ノーチェに怒られてしまった。全部ゲノムのせいだ。


「き、気を取り直して、実はもう一つ、欲しい物があるんだよ。売り物かわからないんだけどね」

「ヴィンデさんが欲しい物? なんですか?」

「なんだと思う?」

「んー、お肉でしょうか?」


 ……ノーチェにとって、僕は食いしん坊のイメージなんだろうか?

 リベルテじゃないんだから。


「魂の篭ったアイテムってのを探してるんだ。それを食べることでスキルを入手できるんだよ」

「アイテムを食べるんですか。食べやすいものならいいですね」

「確かにね。ただでさえ、今の僕は口が小さいから」


 実は、今の僕には最悪の欠点がある。


 変身を使えないのだ。


 命の燃焼のせいで最大HPを1000以上減らしてしまった僕、変身を使い他種族になると最大HPが下がる、下手したら最大HPが0を下回る可能性もあり、僕は変身を使えずにいた。


 とりあえず、称号を増やして、スキル変換レベルを上げさえすれば、G.F.サラマンダーくらいには変身できるはずだけど。

 あと、命の燃焼が状態異常として表示されている以上、なんらかの治療方法があると思うんだよなぁ。


 ただ、状態購入で治療しようとはしたんだけど、


【命の燃焼は状態購入では治療できません】


 って叡智さんに言われるしさ。

 まぁ、本当に命の代償のようなものだから、簡単に治療できるとは思っていなかったけど。


「っと、ここか」


 魂アイテムの気配があったのは、牧場だった。

 牛がいっぱいいる。


 一瞬、美味しそうと思ってしまうあたり、どうも僕は食いしん坊キャラで間違いないようだ。

 ベジタリアンのノーチェはあまり美味しそうには見えないだろうが。


「あれ? ノーチェって、牛乳もあまり飲まないの?」

「いえ、牛乳は飲みますよ」

「卵は?」

「卵も食べることはありますね。あまり好きではありませんが」


 ベジタリアンの中には、卵も牛乳も、それどころか蜂蜜も食べないって人がいるって聞いたことがあるけど、そこまでじゃないってことか。まぁ、僕のために肉も少しは食べられるようになっているって言ってたしね。


 ここに魂アイテムがあるってことは牛関係のアイテムかな……鼻輪とか?

 んー、牛のスキルと言えば、体当たりとかかなぁ。ヴィンデバリスタの性能UPを考えると、体当たりのスキルレベルアップはありがたいけど、できることなら別のスキルを手に入れたい。HPアップにもなるし。


 魂探知ソウルサーチの魔法を再度使うと、近くの小屋の中から気配があったので、僕とノーチェはそこに向かい、扉をノックする。

 反応がない。

 まぁ、索敵スキルでも小屋の中から気配は感じないからな。

 仕方がない、出直すか。

 そう思った時、横の窓から室内の様子が見えたので、ちょっと気になって覗いてみた。


 僕がそこで見たのは――ベッドの横で倒れている老婆だった。

じゃんじゃんじゃーん(火曜サス○ンス風)

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