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オーク村への来訪


 谷を西に進む。

 戦いの翌日、谷の穴は表面だけは全て塞ぎ、落ちていたアイテムやオーク兵の遺体は全てアイテムBOXに回収している。

 オークの遺体を食べたらレベルアップをできるのだろうが、それをできずにいた。


「はい、ヴィンデさん」

「ありがとう、ノーチェ」


 谷の中で、僕とノーチェは昼食を取ることにした。


水球ウォーター


 水の球を出して、手を洗ってからの食事だ。


 最近の僕のお昼は、ノーチェの手作りお弁当だ。

 今日の昼食はベジタブルサンド。僕の分だけは、なんとハムが入っている。


「おいしいよ、ノーチェ。特に野菜が新鮮で、シャキシャキしていて」

「はい、隣のおばさんに分けてもらったんです。ハムは行商人の人が三日前に来たので売ってもらいました」


 まるで新婚気分の食事だ。

 こんなおいしいものを食べた後、もしくは食べる前に、オークの肉なんて食べられるはずがない。


「でも、本当に大丈夫? オークの村に行くのは僕だけでもよかったのに」


 つい一週間前まで、ノーチェはオークに慰み者になり、死ぬと言われていた。

 彼女にとってオークは恐怖の対象でしかないはずだ。


 もしも彼女がオークの全滅を願うのなら、僕は鬼にも邪神にもなるというのに。


「大丈夫ですよ、私がオークさん達を見たのはあのときが最初ですし、それに、ヴィンデさんが一緒だと怖いことなんてあるはずがありません」


 うれしいこと言ってくれる。

 まぁ、今となっては最大の敵のオーク大将も僕の配下だ。危険なことなんてあるはずがない。


 幸せの昼食を終え、幸せの旅はさらに続く。

 なんで、称号【三国一の幸せ者】が手に入らないのか、不思議で仕方がない。


 オークの村という場所には夕方に到着した。

 僕が到着すると、オーク兵が二列に並び、敬礼して僕たちを出迎えた。


 手前にいるのがオーク兵、奥に行くほど強くなり、オーク兵長、三匹となったオーク隊長がいて、最奥にオーク大将がいた。


 本来なら、「出迎えご苦労」とでも言うべきなんだろうが、その光景に、心は小市民に過ぎない僕は――



 ぶっちゃけ、かなりひいていた。



「ど、どうしたらいいんだ?」

「ど、どうしたらいいんでしょう」


 あ、ノーチェもこちら側の人間だったようだ。

 結局、僕たちはびくびくしながら、オークの花道を歩き、一番前にいるオーク大将の前に来た。


「シュクン、ゴクロウ」


 御苦労……って、偉そうな言い方だな。

 遠路はるばるよくおいでくださいました、くらい言ってほしいんだけど。


 でもまぁ、カタコトのオーク大将にとっては仕方ないかもしれない。


 そして、僕は辺りを見回した。

 村と聞いたが、これは廃墟だな。

 かつて人間が住んでいたんだと思う。

 オークが入るにしては扉が小さすぎる。


「まさか、オークがこの町の人を皆殺しにして」

「いえ、ここにあった町の人は、数百年前に疫病で全員死んだと言われています」


 ノーチェが説明してくれた。博識だな。

 まぁ、確かにこの廃れ具合は十年程度ではなりえない。

 いや、あっちの方から微かに血の匂いがする。

 僕の嗅覚強化はごまかせない。


「オーク大将、あっちから血の匂いが……人の血の匂いじゃないとは思うけど、オークの血の匂いでもない気がするが」

「ゴブリンノモノデス」

「ゴブリン?」

「ゴブリン、ワレノコ、ウンダトキ、チダシテシンダ」


 ……ノーチェの顔色が明らかに悪くなる。

 僕も正直、聞いて後悔した。


 オークはゴブリンから突然変異で生まれた。だが、そのせいか、雄しか生まれない。

 そのため、子を作るには人間やエルフの女性やゴブリンの雌が必要になるという。


 そういえば、こいつは子沢山の称号を持っていた。

 つまりは、既にこいつの犠牲者がいたということ。

 いや、そうじゃない。そもそも、オークが突然変異で生まれたということは、最初は一匹しかいなかったということは考えられる。

 1回の妊娠で10匹のオークが生まれるとしたら、50回、つまり最低でも50人のゴブリンか人かが死んでいるということだ。


「……とりあえず、子供を産ませるのに、人間を攫うのはやめてくれないか?」

「ムリダ」

「命令だって言っても無理なのか?」

「ワレ、シタガウ。ホカ、オーク、シタガワナイ。ツヨイコヲナス、オークノサイダイノモクテキ。ゴブリンカラウマレルコ、ヨワイ」


 つまり、ゴブリンからは弱いオークしか生まれないから、人間を攫ってきて産ませるしかないという。

 さらにオーク大将が続けた説明を聞くと、オーク達がオーク大将に従うのは、その強さもさることながら、エルフの他にもドワーフや人を誘拐するつもりだったらしく、その中でオーク大将が選ばなかった者に自分の子を孕ませたいためだという。


 そして、倫理的にはそれは許されないことだが、子孫を残すという手段を考えれば、一概にオークを責めることもできない。

 それは、他の動物を食べないと生きられない肉食動物と同じようなものだ。


 子孫を残すためにはやむを得ないだろう。


「ダガ、ワレ、メイレイスレバ、300ニチワ、マッテクレル」


 300日待ってくれる。


「つまり、その間に僕が何か解決方法を考えればいいのか。ところで、オークの食事はどうなってる?」

「ハタケ、ミルカ?」


 畑? 畑があるのか?

 ぜひ見てみたい。


 そう言って頼むと、オーク大将自ら、僕たちを畑へと案内してくれた。


 歩くこと3分。

 後ろからぞろぞろとオーク兵がついてくる。

 正直、居心地悪い。僕のHPは12だから、後ろから攻撃されたら一撃で死んでしまう。


 索敵スキルでも、前まではこいつらの色は薄い赤だったのに、今は濃い赤になっている。


「ワレノ、ハジメノシュクン、マモノツカイ。ココニハタケヲツクラセタ」 


 え? オーク大将は人間に使われていたっていうのか?

 あぁ、だから人間の言葉を知っているのか。


「ハタケ、ツクレ、イッタ。シュクン、シンデモ、マモッテル」


 こいつ、かなり律儀な奴なんだな。

 主君が死んでも守ってるのか。


「イマワ、ワレラノメシ」


 あぁ、自分達のために畑を育てているというわけか。

 少し感動したけど、損した。


 そして、畑はというと、見事なまでの芋畑だった。

 オーク兵たちが水を汲んできて、畑に水をまいていた。


「へぇ、オークといえば肉食のイメージがあったけど、これは見事だな」

「モッテイク?」

「いいのか?」

「ワレラ、タベル、アマル」


 あぁ、芋は余るくらいあるから持って行ってもいいということか。

 ならば、とありがたく、芋を貰っていく。


 そして、ノーチェは、芋を見て、


「いいお芋ですね。これなら、売り物としても使えると思います」

「そうなの?」

「はい、畑の手入れも見事です。よっぽど丁寧に育てられたんですね」

「……全部終わったらさ、二人でこんな感じの畑を耕しながら、田舎でのんびり過ごすのも良いかもな」

「そうですね。私もそう思います」


 そうして、僕たちはオークの畑を見た後、さらに旅に出た。

後日談目標その①

ブラックドラゴンに進化する。


後日談目標その②

ノーチェとイチャイチャする。


後日談目標その③

オーク達の悩みを解決する。

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