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神様のありがたすぎるお言葉

 どんぶらこーどんぶらこー。

 桃太郎に出てくる桃になった気分で、僕は川を下っていた。ていうか、流されていた。

 いや、別に泳ぐのが疲れたとかじゃないんだけどさぁ。


 寂しいんだよ。寂しすぎる。

 ノーチェ……会いたいよぉ。

 寂しいよぉ。


 森を抜けて、荒れ地の中の川を進む。

 荒れ地の中なので、川辺に動物が結構集まってるなぁ。水浴びしている魔物もいる。

 平和だなぁ。


 とりあえず、食事には困らない。

 今も川辺に何か生き物がいる。


【ランダラビット HP:6/6】


 わぁ、可愛い茶色い兎さんだ。中型犬くらいの大きさはあるけど、食べれるサイズだ。いただきます!

 川から上半身だけ出してパクリ。

 一口だった。


【経験値2獲得】

【スキル:“捕食”の効果により経験値3獲得】


 うん、魚ばかり食べていたし、狼の肉はすじっぽかったが、ウサギの肉はおいしいな。とても柔らかい。

 でも、こんな光景はノーチェに見せられないな。


 ノーチェに……ノーチェ、寂しいよ。ノーチェ。

 兎の味を噛みしめながら、愛しのエルフの姿を思い浮かべる。

 その可愛い姿を、可愛い声を思い出す。


 ノーチェが別れ際に僕に伝えてくれたあの言葉。

 それを思い出すたびに僕のやる気スイッチが――


『やっほー、神様だよ』


 僕の思い出をぶち壊すなぁぁぁっ!


『いきなりひどいな、せっかく私が話に来たのに』


 スパムメッセージの着信拒否設定をしていなかったのか。 


『神の啓示をスパム扱いは酷いよね。全教会に君を討伐させるお触れを出すよ!』


 それは困る!

 だって、僕とノーチェの結婚式は海の見える静かな教会で! と決めているのに!


『なら、私の話を聞いてよ。ていうか、今日は労いに来たんだよ』


 労いに?

 あぁ、進化したから何かくれるってこと?


『うん、いるよね?』


 あぁ、人化の術とか覚えたいんだけど。

 そのためのスキルポイントとかもらえたら嬉しいな。


『無理! ちなみに、人化の術を覚えるにはスキルポイント50万ポイント必要だから』


 50万ポイントって高すぎるだろ!

 なんでそんなに高いんだよ!


『だって、人化の術なんて覚えたら、君は人間として生きてブラックドラゴンになってくれないでしょ』


 確かに。すぐにでもノーチェと結婚して、川辺の家を建てて平和に暮らしたい。

 悔しいが、流石は神様、僕の性格をよく理解している。


『ということで、ご褒美に――』


【叡智レベルが2にあがった】


 お、ご褒美だ!

 あれ? でもステータスは増えてないけど、どういう効果があるの?

 受信できるシステムメッセージが増えるとか?


『ふぅ、楽になった。これで君と話しやすくなる』


 あんたが話しやすくなるためか!


『いやいや、そうでもないよ! なんと、叡智スキルレベル2には』


 ん? 何か凄い機能があるのか?


『システムメッセージON/OFF機能が追加!』


 使えねぇぇぇっ!


『そんなことはないよ、緊迫戦闘中に変なメッセージが出たときの脱力感とき――』

【システムメッセージをOFFにした】


 ……あ、本当だ。

 スパムメッセージを遮断する効果あるじゃないか。

 へぇ、神様にしてはいいスキルをくれた。

 助かる。


【システムメッセージをONにされた】

『切らないでよぉぉ! 本当に泣くよ! 酒飲んで泣くよ! 泣き上戸なんだよ!』


 うわ、スパム復活。わかった、最後まで聞くよ。


『ま、まぁ、君はいくつか進化の道があるんだけど』


 ブラックリトルシャークしかなかったぞ。


『聞いてよ! これから枝分かれするんだよ! でも、どんな進化しても、最終的にはブラックドラゴンになるようにしてあるんだ』


 どんな難事件でも最後には犯人を見つける名探偵ドラマみたいなものか。


『いやいや、そこまでじゃないよ。君が死ぬ可能性はあるんだから』


 ぐっ、確かにそうだよな。ロッシュクラブでも死にかけたし。

 これはフィクションでもないし、実際の人物、団体とも関係あるんだから。


『何の団体?』


 バスフィッシング愛好会。


 ちなみに、その団体の意見で言うと、日本固有の魚が減っているのはブラックバスのせいにされがちだけど、それ以上に生活排水や温暖化の問題のほうが悪いでしょ?

 ブラックバスばっかり怒るのはやめてよね。

 あと、ブラックバスはもう何十年も日本にいるんだから、もう日本固有の魚と言ってもいいんじゃない?


 みたいなことを言っているはずだ。

 たぶん。


『うん、ウソはよくないね』


 ですね。

 今の発言も適当に言っただけで、フィクションであり、実際の団体とは関係ないからね。

 こういう問題は偉い学者に任せましょう。


『ダメだよ、こういう問題は、一人ひとりの意識の積み重ねなんだ。外来魚をむやみに放流しない。許可が必要なペットは、しかるべき場所から許可を貰う。最後まで面倒を見れないペットは飼ってはいけないし、やむを得ない理由で飼えなくなったら保健所に相談』


 そうだよな。うん、確かにその通りだ。流石神様、いいこと言うな。

 僕、頑張るよ!


『うん、それでこそ私が見込んだ男だよ! 頑張ってね!』


 こうして、神様はようやくどこかに行ってくれた。

 追い払うことに成功した。


 ……お腹空いたな。


 考えたら、外来魚だろうと固有の魚だろうと、食べる側の僕からしたら関係ないんだよね。

 むしろ、この川にとって、僕こそが外来魚じゃないんだろうか?


 そんなことを思いながら、下流へと向かった。

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