出世魚物語、その行く先は?
暖かい……ここは、天国か?
だとしたら、幸せ……じゃない。
僕が死んだんだとしたら、結局、ノーチェのことは守れなかったってことか。
ノーチェ……こんなことならやっぱりエルフの村にいるときに君のことを一目見たらよかった。
でも、幻聴でも、あの時、最後の攻撃をしかけるあの時、ノーチェの声が聞こえてよかったな。
「ヴィンデさん」
あれ? また聞こえる。
「ヴィンデさん、しっかりしてください」
「え?」
※※※
目の前に、緑色の髪の天使がいた。
いや、天使じゃない、愛しのノーチェがそこにいた。
ノーチェ……君も死んで
【ノーチェ:HP19/19】
あれ、HPがある。生きてるの?
じゃあ、僕は?
【HP:1/1】
……生きてる。はは、生きてる、生きてるや。
ならば、と横を見る。
横で、オーク大将が座りこちらを見ていた。
「ナゼ……ワレ……イキテル?」
そうだ、10万オーバーの攻撃、普通ならお前は死んでいるはずだ。
でも、僕は殺さなかった。
オーク大将に戦いを挑む前に、スキルポイントを1支払い、手に入れたスキルによって。
……………………………………………………
手加減攻撃:Lv1 レア度:★★★
レベルアップ条件:一定回数使用する。
どんなに強い攻撃でも、HPを1残すことができるスキル。
殺したくない相手に使おう。
入手条件:称号【寸止めの達人】を取得
……………………………………………………
これを使った。
そして、僕はオーク大将のステータスを確認する。
……………………………………
名前:****
種族:オーク大将
レベル:62
忠誠度:90
HP 51/3041
MP 0/0
状態:通常
スキルポイント 0
……………………………………
ステータスの中で、見える項目が増えている。
そして、忠誠度という項目がある。
……テイムに成功したっていうことだ。
「お前を殺すわけにはいかなかった。お前がいなければ、オーク兵は指揮系統を失い、何をするかわからない。エルフの森を襲う危険があった。それだけじゃない、命の燃焼を使った僕を他のオークを襲う可能性があった。だから、お前をテイムする必要があった」
「……リカイシタ。チイサク、カシコキモノ、アナタヲシュクントミトメヨウ」
そう言って、オーク大将は傅いた。
と同時に、
【称号:百人隊長を取得した】
【スキル:激励を取得した】
と叡智さんのメッセージが流れた。
助かる、これでHPもわずかに増える。
【HP:1/4】
ふぅ、生きているんだな、僕。
ってことは……あれ?
「ノーチェ!?」
僕を優しく抱いてくれている、死後の幻でもなければ僕の妄想でもない。
本物のノーチェ?
この柔らかい感覚も、優しい香りも全部、本物のノーチェなの?
「はい、ヴィンデさん!」
「ノーチェ、どうしてここに? そもそも、どうやってここに? オーク兵がいっぱいいたでしょ」
「それは、フレーズが」
ノーチェが自分の背中を見るように言った。
「あはは、ごめんね、ヴィンデ。ノーチェに詰め寄られて、話しちゃった。でも、ここまで彼女が無事に来られたのは、私の妖精魔法のおかげなんだから、感謝しなさいよね」
そう言いながら、フレーズが出てきた。
申し訳なさそうにしていたのに、すぐに偉そうな態度になるところが彼女らしい。
「あぁ、ありがとうな、フレーズ。ノーチェを守ってくれて」
「こっちこそ。私の大切な友達を守ってくれてありがとう、ヴィンデ」
フレーズはそう言うと、にっと笑い、羽をはばたかせた。
「じゃあ、邪魔者は退散ー♪」
そう言って飛び去って行った。
そして、僕とノーチェの二人きりになる(オークは今は無視)。
「ヴィンデさん、無事でよかった。フレーズの様子がおかしかったから聞いたら教えてくれたの」
「僕のほうこそ言いたいよ。ノーチェが無事でよかった……」
見つめ合う僕とノーチェ。
このままキスでもしたいところだけれど……いきなりキスをして嫌われたりしないだろうか。
あぁ、もう、オーク大将に戦う時の勇気はどこにいったんだよ、僕!
え、ノーチェに嫌われるのは死ぬよりも怖い!?
その通りだよ。
どうしようか迷っていたら、
「ヴィンデさん……」
「どうしたの? ノーチェ」
「その……私からするのも……ちょっとあれなんですけど……あの、はじめてなんで……あの……」
「落ち着いて、どうしたの?」
「し、失礼します」
その声とともに、僕の唇に……彼女の唇が重ねられた。
……えっと、これって……あれ? これって……?
キス!?
時間にして、僅か3秒の……一生の幸運を全て凝縮させたような幸運に僕は目を白黒させた。
頬を僅かに赤らめさせた彼女の瞳を見て、僕は再び恋に落ちる。
「好きです、ヴィンデさん」
「僕も……大好きです、ノーチェ」
そして、今度はどちらから、というわけでもなく、二人で一緒にキスを交わした。
エルフの森から、輝く太陽が昇り、僕たちを明るく照らしていた。
その横で――
「……ワレラワドウシタラ」
オーク大将が呟いた。君たちは空気を読んでください。
その後、指示は後でだすからと、オーク達を谷の向こうにあるという彼らの巣に戻らせ、本当の意味で二人だけの時間を過ごしていた。
「そういえば、ノーチェ、少しだけ強くなった? HPが上がってるんだけど」
「はい、ヴィンデさんと一緒に旅に出られるように、一生懸命鍛えました」
「……僕と一緒に?」
「はい。少しですが、お肉も食べられるようになったんですよ」
「あぁ、そこから頑張ってくれたんだ」
ちょっと頑張る方向性が違う気がするが、そこも可愛いなぁ
そして、僕たちは、お互いに今まであったことを語りあった。
最後に約束の再確認をする。
僕が人間になれたら、結婚するという約束を。
「もし、僕がブラックドラゴンになって、神様からご褒美を貰えて、人間に生まれ変わることができたら、結婚して欲しい」
あの時と同じ質問を……全く同じセリフで僕はノーチェに尋ねた。
「一つだけ条件があります!」
「なに?」
「私を一緒に連れて行ってください!」
「……今からは海には戻らない。陸の旅になる」
「はい、私はエラ呼吸はできませんが、肺呼吸はできます」
「僕のHPは低い。今なんてHP4しかないし、右翼もこんな状態だから、君を守ることができないかもしれない」
「守られてばかりの生き方なんて嫌です。二人で一緒に強くなりたいです」
「……いや、ダメだ」
僕は首を横にふり、
「そんな弱気じゃダメだ。例えHPが4しかなくても僕は絶対にノーチェを守る。だから、僕と一緒に旅に行きましょう」
「……はい! でも、やっぱり今度は私がヴィンデさんのことを守って見せますからね」
そして、僕たちは三度目のキスを交わした。
こうして、僕の――僕たちの物語は始まった。
『いやぁ、良いお話だったね』
……お前がこなければこのままハッピーエンド、いや、ハッピースタートだったのにな。
神に向かって内心悪態をつく。
『え? そんなこと言っていいの? ご褒美を上げようと思ったのに』
叡智のレベルアップか?
それならもう間に合ってるんだけど。
『いやさぁ、さっき一瞬だけ、君、なったじゃない。ブラックドラゴンに』
え? あれって幻じゃなかったの?
『幻じゃないよ。だから、君にこれをプレゼントしようと思ってね』
【スキル:人化の術を取得した】
――!?
え?
『約束は約束だよ。さて、私はそろそろ店の準備があるから』
店って、お前、何の店やってるんだよ。
『ははは、そうだね、買い物のスキルを使ったら教えてあげるよ、リトルベイビー。じゃあね』
なっ、おま、ゲノムか!
「どうしたんですか、ヴィンデさん」
「あぁ、ちょっと思わぬ事実が発覚してさ。ところで、ノーチェ。人間用の服ってエルフの村で売ってるかな?」
「あると思いますけど」
「じゃあさ、買いに行きたいんだ。一緒に行ってもらっていいかな」
「はい」
「あと……結婚指輪も……買おうか」
「――え?」
結局、僕の記憶喪失は治っていない。
ブラックドラゴンになったとは言え、一瞬だけ、今はただのベビードラゴンだ。しかも最大HPは4で右翼欠損のおまけつき。
でも、僕はハッピーエンド……いや、ハッピースタートを迎えた。
僕の出世魚物語は、こうして、最高のスタートで幕を閉じる。
思えば、多くの者に助けられた。
アロエ、リベルテ、アトラス、ついでにサイモンにも。
今度、ノーチェと一緒にみんなに会いに行こう。
そう思いながら、僕たちはエルフの村へと向かった。
最後に、これだけは言わせてほしい。
鯉は龍になれるかは僕はしらない。
でも、ブラックバスはブラックドラゴンに進化することができる。
そして、ブラックドラゴンになった僕は、これから幸せに生きることができ、ノーチェを幸せにする。
僕の物語は、やっぱりここからだ。
御愛読ありがとうございました。
これを以って、最終回となります。といっても完結ではありません。
この物語は、異世界でアイテムコレクターで、主人公が釣り上げた魚が、実は人間の転生者だったら、という謎のスタートで開始したなんちゃって物語です。
それが、まさか100話を越え、ここまで進むとは思ってもいませんでした。
ハッピーエンドを迎えたヴィンデですが、これはまだスタートです。
物語はまだまだ続きますが、ここで最終回だと思ってください。
なぜなら、次回からはヴィンデとノーチェのリア充爆発しろ二人旅物語です。
なかなか進化もしませんし、レベルアップもしません。
どこまで続くか私自身もわかりません。
なので、ここで終わって後は蛇足だと思ってください。
ちなみに、最終目標はアルモニー撃破です。
無理だと思ったら諦めます。
つまりは、ただでさえぐだぐだ物語だったのに、さらにぐだぐだになります。
でも、まぁスキルと称号はさらに増えていくので、そっちがどこまで増えるのか?
目標1000個で頑張っていきますね。
最終ステータス。称号やスキルにより、強くなっています。
オーク大将は倒していないのでレベル増えてない。
進化キャンセラー分の最大HP増加は命の燃焼をHP1に設定していたためすぐに消費されています。
……………………………………
名前:ヴィンデ
種族:ベビードラゴン
レベル:8
HP 4/5
MP 912/912
状態:記憶喪失 肉体欠損 命の燃焼
スキルポイント 28
攻撃 653
防御 652
速度 755
魔力 585
幸運 46
経験値補正+40%
スキル:【捕食:Lv7】【言語理解:Lv2】【叡智:Lv4】【ステータス把握:Lv4】【スキル鑑定:Lv7】【索敵:Lv4】【泡:Lv3】【献身:Lv1】【硬い鱗:Lv4】【鋭い歯:Lv5】
【肺呼吸:Lv5】【土魔法:Lv4】【鮫肌:Lv2】【HP自動回復:Lv4】【忠義:Lv2】【毒攻撃:Lv2】【回復魔法:Lv3】【マッピング:Lv3】【嗅覚強化:Lv3】【変身:Lv4】
【擬態:Lv2】【良眠:Lv3】【テイム:Lv2】【君主:Lv3】【称号鑑定:Lv7】【挟力UP:Lv1】【悪食:Lv2】【アイテムBOX:Lv5】【尻尾攻撃:Lv2】【MP自動回復:Lv3】
【水魔法:Lv2】【風魔法:Lv1】【火魔法:Lv1】【美味しそうな香り:Lv2】【火の息:Lv3】【麻痺攻撃:Lv3】【感覚強化:Lv1】【軟着陸:Lv5】 【暗闇攻撃:Lv2】【鑑定:Lv5】
【脱兎:Lv4】【スケープゴート:Lv3】【経験値貯金:Lv2】【毒針:Lv2】【舌攻撃:Lv1】【蜜採取:Lv1】【殻篭り:Lv1】【吸着:Lv1】【体当たり:Lv2】【孤独耐性:Lv1】
【称号変換:Lv2】【消化促進:Lv2】【沈黙攻撃:Lv1】【猛毒攻撃:Lv1】【酸攻撃:Lv1】【錬金術:Lv1】【魔導書記:Lv2】【記憶固定:Lv4】【罠作成:Lv1】【スキル変換:Lv1】
【消臭:Lv1】【火炎の息:Lv1】【猪突猛進:Lv8】【胃拡張:Lv2】【経験値贈与:Lv1】【竜の血:Lv3】【竜の魂:Lv2】【竜の鱗:Lv2】【竜の角:Lv2】【鋭い爪:Lv2】
【飛行補助:Lv2】【角攻撃:Lv2】【息を吸う:Lv2】【ミニドラゴンブレス:Lv2】【暗視:Lv2】【遠見:Lv2】【両替:Lv1】【貨幣貯金:Lv1】【買い物:Lv6】【強者の笑み:Lv1】
【魔商人探知:Lv10】【体力購入:Lv1】【魔力購入:Lv1】【状態購入:Lv1】【魂食い:Lv1】【腐竜の爪:Lv1】【腐竜の息:Lv1】【肉体再生:Lv1】【魔王の祝福:Lv1】【探知魔法:Lv1】
【運搬:Lv1】【斬耐性:Lv1】【殴耐性:Lv1】【突耐性:Lv1】【急浮上:Lv1】【急旋回:Lv1】【急降下:Lv1】【スモーク:Lv1】【寝る:Lv1】【命の燃焼:Lv10】
【水浄化:Lv1】【斧攻撃:Lv1】【早食い:Lv2】【強靭な体:Lv1】【手加減攻撃:Lv1】【ドラゴンブレス:Lv1】【ボディープレス:Lv1】【激励:Lv1】【人化の術:Lv1】
称号:【転生者】【異世界魚】【記憶喪失】【捕食者】【蟹の天敵】【子持ち】【子沢山】【スキル収集家見習い】【魔術師】【出世魚】
【称号収集家見習い】【ハートブレイク】【ネームドモンスター】【毒持ち】【癒し手】【迷宮ウォーカー】【魔王を討伐せし者】【スキル収集家】【共生】【支配者】
【称号収集家】【貝の天敵】【レアアイテムイーター】【異世界有尾類】【レアモンスター】【スキルマニア】【小金持ち】【四大元素魔術師】【レアハンター】【怪人10面相】
【称号マニア】【木登り手習い】【暗闇持ち】【スキル辞書編纂者】【蜂の天敵】【蛙の天敵】【スキル編纂室長】【麻痺持ち】【沈黙持ち】【猛毒持ち】
【称号辞書編纂者】【蟻の天敵】【巣窟破壊】【蒼の守護者】【アルケミスト】【勉強家】【信者】【逃亡者】【大逃亡者】【罠師】
【称号辞書編纂室長】【成長期】【大物食い】【経験値積立人】【異世界竜】【竜族】【スキル大臣】【視力2.0】【金持ち】【ミリオネア】
【大金持ち】【キャッチ名人】【敗北者】【勝ち知らず】【勝利者】【負け知らず】【魔商人の上客】【命の売買】【魂喰らい】【カモ】【称号大臣】【丈夫な体】【空の曲芸師】【スキル国王】【井戸掘り職人】【オークの天敵】【フードファイター】【無謀な挑戦者】【超進化】【巨大な体】
【進化キャンセラー】【百人隊長】
……………………………………
 




