ヴィンデの罠発動
穴の中は薄暗いが、暗視のおかげで簡単に見ることができる。
地下数十メートルの穴の底には横穴があって、奥に通じている。僕が掘った穴だ。
少し勾配がある上り坂になっている。
穴の底から上を見上げると、オークが何が矢を射ってきた。
だから効かないって。
アイテムBOX。
矢をアイテムBOXの中に収納しながら上に向かってあっかんべーをする。
すると、とうぜん怒ったオーク達が飛び降りてきた。
なので僕は咄嗟に横穴に入っていく。
ここで孔明の罠発動!
お前が着地するそこは床が薄くなっているんだよ!
ということで、床を突き抜けて落ちていくオーク達。
……経験値が入らないか。
やっぱり足から落ちただけだと致死量には達しないらしい。
だが、抜け出せない深さには掘ってある。
そして、僕は横穴に向かって走って行った。
途中で、目印となる美味しそうな香りの部分を見つける。
「落穴」
そこを空けると、上に空洞があった。
ここはハズレか。
さらに別の場所の穴を空ける。
すると、どすんとオークの死骸が落ちてきた。
その死骸をアイテムBOXに収納し、
「土壁」
穴を塞ぐ。
それを繰り返し、計12体のオークの死骸を回収することに成功した。
途中で生きているオーク兵が瀕死の状態で攻撃してくる、というアクシデントがあったが、ミニドラゴンブレスでやっつけた。
「さて、そろそろかな」
後ろを見る。
やはり来たか、オークが。
後ろからオークが追ってきている。全員ではないな、数は20ほどか。
よし、孔明の罠再度発動!
ここで、思わず役に立ったスキルがある。
探知魔法。
水探知って、地下水のある場所もわかるんだよな。
横穴を掘るときに、地下水のある場所があったら嫌だなぁと思って水探知を使っていたら、この上に地下水がかなり溜まっている場所があることがわかった。
その量は約3000トン。谷のほうに大きく伸びている。
例えば、ここで底に穴をあけたらどうなるか?
僕はニヤリと笑い、
「落穴!」
僕の後方の天井に穴を掘った――直後、大量の水が天井から落ちてくる。
【称号:井戸掘り職人を取得】
【スキル:水浄化を取得】
ありがとうございます!
井戸なんて掘った覚えはないんだけどね。
ダムも小さな穴が空いたら決壊するように、本来は簡単に壊れないはずの魔法で作った穴は脆くも崩壊し、だんだんと穴が広がっていく。
そして、坂道のため、目指すはオークの追っ手達だ。
オークたちがもしも蟹に変身でき、なおかつ吸着スキルを持っていたらこんな攻撃なんともないだろうが、オークにはこの攻撃は有効だろう。
さて、ここも危険だな。水は下に流れていくとはいえ、穴のある場所よりは上方に逃げたい。
索敵スキルによると、僕を追ってきたオーク達は後方に押し流されていく。
これでもう追ってこれないよな。
広い空間、もともとここにあった鍾乳洞に出る。
そこで、僕は先ほど回収したオーク兵と、さきほど倒したオーク隊長を出して、全てを食べることにした。
その前に、経験値が何匹分か入ってくる。
水で溺死したか、水に流されて穴の底の針にでも突き刺さったのか、それとも他の要因があったのかは知らない。
結果的に、
【称号:オークの天敵を取得した】
【スキル:斧攻撃を取得した】
あれ、オークに変身できないのか?
変身レベルが足りないのかもしれない。
まぁ、今は変身するつもりはないからな。
そして、僕は出したそのオークの死骸を食べた。
僕よりもはるかに大きなオークだが、捕食、消化促進、胃拡張とリベルテ並みにスキルを揃えた僕が食べられないわけがなかった。
だが、時間をかけてもいられないので、
【スキルポイントを3支払い早食いを取得しますか?】
【スキル:早食いを取得した】
【称号:フードファイターを取得した】
【スキル:早食いのレベルが2に上がった】
【スキル:胃拡張のレベルが2に上がった】
【スキル:消化促進のレベルが2に上がった】
早食い、胃拡張、消化促進の3つがあれば手に入る称号らしい。
と、オークを食べながら確認した。
さらに食べる速度が速くなる。
そして、12体のオーク兵を食べた結果、さらにレベルが2上がった。
そして、オーク隊長を食べ終わったときにもう一つ。
【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】
【魂食い効果により、スキル:強靭な体を取得した】
【スキル:HP自動回復のレベルが4に上がった】
【スキル:猪突猛進のレベルが8に上がった】
強靭な体……これは、オーク隊長も持っているスキルだ。
HP、攻撃、防御が増加するパッシブスキル。
レベルアップとそのスキルのおかげで、ステータスがこんな感じになった。
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名前:ヴィンデ
種族:ベビードラゴン
レベル:8
HP 1043/1104(+191)
MP 865/906(+91)
状態:記憶喪失
スキルポイント 28(+9)
攻撃 648(+115)
防御 658(+112)
速度 768(+101)
魔力 592(+80)
幸運 46
経験値補正+30%
……………………………………
追っ手はきていないが、索敵によると、敵はまだ本陣に戻っていないようだ。
ならば、行くか。
だいぶ坂を上がってきた今、僕がいるこの場所。
実は――ここはオーク本陣の真下だ。
いよいよ決戦。




