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対決オーク軍

 夢を見ていた。

 緑髪の美少女――ノーチェが窓から外を見ていた。

 一人でいる彼女の部屋の扉が開き、フレーズが現れた。

 空を飛ばず、歩いて部屋に入ってきた。


「ノーチェ、まだ起きてたの?」

「うん、明日……なんだよね?」

「そう聞いてるわ」


 一日早くなったことは辛いが、それを知ってよかったと彼女は言った。

 ちゃんとした気持ちで、最後の星空を見ることができるから、と。


「……ねぇ、ノーチェ……本当にいいの? このまま逃げちゃわない? 私がヴィンデのところに連れて行ってあげるから。言っちゃなんだけど、私の妖精魔法があればエルフ相手でもオーク相手でも簡単に逃げられるわよ」


 フレーズはノーチェに縋るように言った。だが、彼女は柔和な笑みを浮かべ、首を横に振った。

 そして、フレーズに「ありがとう」と言って、


「私が逃げたら、村のみんなが殺されちゃうから。それに、私、ヴィンデさんと一緒に旅をするためにだいぶ鍛えたのよ。簡単には死なないわ」


 ノーチェはそう言って、拳を握って元気に振り下ろした。空元気なのはすぐにわかる。とても痛々しい。


「ねぇ、フレーズ。あなたにお願いがあるの」

「何? 何でも言って! できることならなんでもするから」


 フレーズは羽をはばたかせ、ノーチェの顔の真正面に移動した。


「もしもだけど、私が死んだら、ヴィンデさんに伝えてほしいの。『貴方に助けてもらった命はみんなの為に使います。あなたのおかげで村は救われます。でも、貴方との約束が守れないのがとても辛いです……私はヴィンデさんのことが……』……ごめん、フレーズ、『救われます、でも約束を守れなくてごめんなさい』って伝えて」


 ノーチェはそう言って、大粒の涙の浮かんだ目を擦った。


「最近、ヴィンデさんの夢を見てないの……ヴィンデさん、元気でいるのかな」

「……うん、あいつのことよ、きっと元気よ」


 フレーズがそう言うと、ノーチェは小さく呟くように言った。


「ヴィンデさんに会いたいよ」 


   ※※※


 そして、僕は目を覚ました。

 フレーズはまだ起こしに来ていない。


 あれは僕にとって都合のいい夢なのか、それともリアルタイムの映像なのか。

 そんなのわからない。


 でも、どちらだとしても、この夢を見せてくれたことには感謝する。

 もう準備は整った。


 僕は小さな翼を羽ばたかせ、急浮上する。

 スキルのおかげで上昇速度が大きく上がっていた。

 そして、西へと移動し、オークの本隊を避けるように森の反対側へと移動した。


 ここは岩肌の谷になっていて、道も狭い。空を飛んで谷の上に逃げたら下からは死角になって弓矢でも狙いにくい。


 まずは罠を作ろう。

 まともに戦ったら勝てないのは決まっているからな。


 1時間かけて罠を作り、谷の上からオークの本隊を見る。


「よし、行くか」


 泡を作り、泡の中に腐竜の息を混ぜる。

 泡が大きく膨らんだ。

 凄いな、まるで紫の風船だ。


 思えば、ピエールクラブを食べて食べて食べ尽くしたブラックバス時代、蟹の天敵の称号と同時に入手した、使い方のよくわからなかったこの泡スキルを入手できなかったら、今の僕はなかったかもしれない。今日も役立ってもらうぞ。


 その泡を10個作り、


微風ソフトウィンド!」 


 風に乗せて泡を東へと、オークの部隊へと送る。


 それを10回繰り返した。

 MPが200減った。

 ゲノム、早速使わせてもらうぞ。


【金貨2枚を支払い、MPを200買いますか?】


 YESだ!


【魔力購入のレベルが2に上がった】

【魔力購入のレベルが3に上がった】

【魔力購入のレベルが4に上がった】


 よし、MP全回復……これって金さえ払えば最強なんじゃないかな。

 そう思ったんだが、実際はそうではないらしく、


【次回購入可能時間まで残り23:59】


 と表示が出た。


 まさかのクールタイムが発生。ぐっ、最強とみせかけて後から足枷を付けるとか、やることがずるいな。

 でも、魔力購入レベル2に上がるぎりぎりで銀貨の消費を止めて、レベル2になると単価が下がるからそこから回復する、みたいなケチくさい方法をとらなくてよかった。


 そして、泡はというと、風にのって次々とオークの元へと運ばれていく。

 遠視で見ると、何匹かのオークはそれに気が付いたようで、警戒しながら、一匹のオークが警戒しながらその泡と突いた、その時だった。


 泡が弾け、中に高密度に込められていた腐竜の息が周囲に広がった。

 それと同時に、他の泡も連鎖的に破裂(僕が破裂させているのだが)していき、オーク本隊は、空からの爆撃と同様大混乱になる。


 そして、一匹のオークが、泡が流れてくる方向にいる影――僕を見つけて、怒号をまき散らせる。

 敵襲の合図だろうか?


 と同時に、他のオークが、あろうことか怒号をまき散らせたオークの無防備な背中に斬りかかった。

 しめた、あれは混乱の効果が発動している。


 すぐに他のオークに取り押さえられたが、混乱しているオークは一匹や二匹じゃない。

 よし、浮足立っている、その間にさらに腐竜の息爆弾で混乱するオークを増やせば、内乱が間違いない。

 そう思った時だった。


【ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!】


 谷にいても聞こえてくる巨大な声が大地を震わせた。

 と同時に、混乱状態のオークが正常に戻ったかのように立ち上がる。


 あれは……そうか、激励か。確か、オーク大将が持っていたスキルだ。

 激励のスキル効果はわからないが、混乱を無理やり解除した、そう思うのが妥当だろう。


 そして、天幕からそいつが姿を現した。

 オーク大将……僕の敵だ。


 だが、オーク大将自ら混乱したらどうなるかな?


 僕はオーク大将付近の泡を破裂させた――その時だった。

 泡から溢れた煙がオーク大将を襲う前に、オーク大将が斧を回転させて煙を空の彼方へと押しやった。


 ウソ……だろ? まるで扇風機みたいなやつだ。

 あいつ相手なら、僕の最大の攻撃であるミニドラゴンブレスも通用しないかもしれない。


 きっと、斧スキルによる技なんだろうな。


 そして、オーク大将がこちらに向かって斧を向けて何かを言った。

 すると、オーク……その数約400がこちらに向かって進軍してきた。


 おいおい、1人に対して400体ってやりすぎだろ!


 って、100体近くいる弓兵が、僕に対していきなり矢を放ってきやがった。

 1匹1本、つまり100本の矢が僕へと降り注いでくる。うち、80本は狙いは素晴らしい、どこに避けても刺さりそうだ。

 だが、弓矢対策に関してはすでに考えてあった。


 ここで改めて僕の欠点を言う。

 スキルの種類は100種類。だけれども、一撃必殺になるようなスキルはない。どれも単発では使いにくかったりする。

 だけど、どんなスキルでも使い方さえ間違えなければ、最高のスキルになる!


 突如、僕に当たりそうな矢が全て消えた。


……………………………………………………

アイテムBOX:Lv5 レア度:★×5


レベルアップ条件:アイテムBOXをレアアイテムで満たす。


効果説明:周囲3メートル以内のアイテムを保存することができる。

ただし、敵の装備は保存できない。ストレージはレベルごとに増加する。


入手条件:称号【レアアイテムイーター】取得

……………………………………………………


 装備とは装着しているアイテムのことらしい。つまり……放たれた矢はすでに装備ではない。

 キャッチ名人の称号で得た動体視力で、次々と僕に当たりそうな矢を判別、アイテムBOXに収納したわけだ。


 僕に飛び道具は効かないぞ、オーク達!


 でも、戦いはここからだ。

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