02
シルバは「あのなー」と続ける。
「鉄道ジャックは確かに悪いことだ。なぜなら公共の施設が提供するサービスを妨害するうえに乗客の行動を勝手に制限するからだー。そんな事はあっちゃならねぇ。それに対するお前の行動は結果的に制圧の決め手になったな」
先の騒動、鉄道ジャックはロニがテロリストたちを叩きのめすことで終結する結果となった。
車外に吹き飛ばした者も入れて十三人。
今はその全員がここカトレアで拘束されている。
「何か壊しちまうのは不可抗力だからそれは仕方ないし、○公のお前には現行犯を叩きのめす行使権があるけどなー度が過ぎんだよ。いいかーこのアイアンホースは運行に著しい遅れが生じた場合、その原因が人為的なものであれば原因を起こした当人に鉄道会社が損益の支払いを要求する権限があってだなー、仮に車両大破が原因で遅延が認められたとすれば、損害賠償請求がくる可能性があるんだー」
「……つまり?」
むくれ顔から徐々に強ばった笑顔へ変わっていくロニが恐る恐る確認すると、シルバは端的に返した。
「ごめんなさいって言いながら金払わねぇといけないって事だよ」
沈黙。
たっぷりの空白をもって視線を正面へ戻すロニ。
「舌をしまえ。可愛い子ぶっても無駄だ。金も貸さん」
「鬼! シルバは鬼です!」
「うるせぇな、そこのブリキとハンマー取ってくれ」
「断ります! シルバがお金を貸してくれるまで、僕はブリキとハンマーはおろかネジ一本でさえも渡しません!」
「まだ請求がくるって決まってないけどね。っつうか、そういう時こそ公認魔術師のライセンスを使えばいいじゃないの。研究費用とか言ってさ」
「いや……そういう使い方は」
一瞬言い淀んで続けようとしたところでロニの言葉が止まる。横に灰色のフロックコートを着た男がいることに気付いたからだ。
フロックコートの男はシルクハットを外しながら気さくな笑みを浮かべて名乗る。