03
終わりの見えない荒野。
大陸鉄道最速の本車両アイアンホースをもってしても横断に三時間ほどかかってしまう道程には全五ヵ所の分岐ポイントがあり、内二ヵ所に物資補給とメンテナンス用の停車駅がある。
二ヵ所目の停車駅はまだ通過していないから気分転換のチャンスはあるものの、出発前に車掌から聞いた各停車駅の発着時間と懐中時計を照らし合わせると、
──うわあ……次の駅まであと三十分以上もあるんだ……。
自然と苦笑してしまう。
ロニは先ほど、こんなにいい景色なのにと言ったが、景色なんてずっと同じものを見ていれば飽きるし、つまらなくなるし、当然眠くもなる。それでもロニがそう言ったのは、二人で会話でもしていれば時間なんてすぐ過ぎるじゃないか起きろオッサン。と思ったからだった。
窓から向かいの席へ視線を移せば、幸せそうに眠る四十代男性の顔が。
口パクでバーカと言うも当然ながら聞こえず──代わりに、乾いた金属音が鳴ったのをロニは聞き逃さなかった。
目覚める時に聞いた音と同じ。
発生源は恐らく前部車両。
蒸気機関車の機工が打ち鳴らす音かと一瞬思ったが、ロニが知る限りで一致するそれはない。
──……ちょっと見てこよう。
隣の席に置いた上着を掴み、立ち上がろうとしたところでロニの挙動が止まる。
左側頭部に押し付けられたひんやりとした感覚。視線だけ動かしてそちらを確認すると、口元に茶色のバンダナを巻いた男が銃口を突き付けているのが見えた。それと共に客席の至る所から悲鳴が飛ぶ。
「大人しく人質になれ。手荒な事はしねぇ」
鉄道ジャックか、とロニは察する。
車両内には同じような格好をした男がもう二人。
蒸気機関車を占拠するのは得策ではない。行先と経路が限られるからだ。加えてアイアンホースは旅客車である。金品は基本的に乗客の持ち物だけ。