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「すみません……即断できなくて」
「謝らずとも良いです。ではこの件は一旦保留ということにしましょう。ところでガフ殿、バルフォア殿、お二人はこのあと行き先はどちらに?」
その問いに、二人は一度顔を見合わせた。そしてロニが答える。
「僕たちはクライムサイドまで行くつもりです」
「おお、そうでしたか」
分岐ポイントであるカトレアからは路線が分かれる。
クライムサイドを終点とするアイアンホースが辿る路線と大陸の首都を終点とする路線。そして大陸南にある港町を終点とする路線の計三つ。
聞けば、フリックの行き先も同じくクライムサイドであるらしい。
「でしたら、どうでしょう。お詫びといいましょうか感謝といいましょうか、今日は私の家に泊まっていってはくださいませんか?」
「いや、でも……」
「バルフォア殿は命の恩人。それにブロンズサイ社のガフ殿に会える機会など今後あるかどうかも分かりません。色々とお話もしてみたい」
元ね。とシルバはブリキで穴を塞ぎながら付け足す。
「向こうに馬車も用意してあります。是非一晩だけでも」
言われてロニは、再度シルバの顔を見る。
断りきれないと判断したのか、シルバは肩をすくめて「お前の好きにしろ」と目で言っている。それによくよく考えれば断る理由などない。宿泊費が一日分浮くというのなら、こちらとしてはありがたい限りだ。
「じゃあ……お言葉に甘えて」
ロニの返答を受けたフリックは、目じりに皺を寄せてにっこり笑っていた。




