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「もしもそれらが発生した場合、私、フリック・シーガルが責任の全てを負いましょう」
それを聞いたロニは、なんだか複雑な気持ちになった。
車両を壊したのは自分だし、怒りに身を任せていたとはいえ制圧にはもっと別の方法もあったはずだ。
結果的に乗客と乗組員に死傷者がいなかったとしても、列車の遅延が発生する状況を作ってしまったのは事実。その負債額がいくらであろうとも、支払いを命じられた時は、責任をしっかりと取らなければならない。
「お気持ちは嬉しいんですが……列車を壊してしまったのは僕ですし……」
支払いの心配がなくなると思うと安堵してしまう自分もいるが、
「バルフォア殿。どうかお気になさらず。淑女に責任を負わせるは男にあらず」
ここまで格好よく言われてしまっては任せざるを得ないというか、相手としてはもしかしたら引っ込みがつかないのかもしれない。男というのは半分以上はプライドで出来ていて、同時に繊細でナイーブな生物なのだとロニはシルバから聞いたことがあった。
花を持たせるではないが、素直に頼って相手を立てるのが礼儀というような気もしてくる。
というか淑女と言われました! とロニが興奮気味にシルバへ報告すると、ああ良かったね。と気のない返事が飛んだ。
「まあ、見ず知らずの人間に全てを任せるというのも、難しい話だと思います」
返答に困るロニを慮ってかフリックは言う。
信用信頼というのは一足に埋められるものではない。
たとえ知り合いであったとしても、こと金銭絡みの場合においてはその後の関係に支障をきたす恐れが大いにあるうえに、悪く言えば弱みを握られることにもなる。
また、だからといって助けようとしている側が悪意はないと意志を開示していたとしても、信頼関係ができあがっていなければ全く意味がないのだ。




