機械仕掛け少女
はいはいと彼女は頷く。
イエスかノーかなんて選択肢は必要なくて、ただ言われたことをこなして行く。
その顔に表情はない。
ただただ淡々と黙々と。
感情のない機械のように。
別に機械じゃないけれど、彼女の頭を占めているのは損得の考えだけ。
どうしたら効率良く生きれるかってことだけ。
だからイエスもノーも口にしない。
手っ取り早く何もかもを終わらすために、彼女は自分の考えを一切口にしないのだ。
その目は何の感情も映さない。
扱いやすく扱いにくい彼女。
「だってその方が楽じゃない」
澄んだ瞳を向けてそう告げる。
でも澄んだ瞳の中には感情の色はなく、ガラス玉のように反射をするだけ。
感情を見せずに生きることが楽だと彼女は語る。
彼女自身に感情がないわけではない。
ただ少し意思がないだけ。
強い意志を持たずに何となくで流される、そして楽な方に持っていき効率良く生きれるように生きる。
生に対して楽をすることに対して、そして効率良くすることに関して貪欲。
自分のために貪欲になる。
だが変化は見せずに淡々と生きる。
「効率良く生きれるなら、どうでもいいし。面倒くさいことには、巻き込まれたくないでしょう」
こてん、と首を傾げた彼女は愛らしい。
その声と瞳に感情が宿れば。
担任に任されたプリント整理の仕事をするために、彼女はそのプリントを抱えた。
そしてこちらを振り返って僅かに目を細めて、面倒くさそうに唇を動かす。
「だから、君も私の邪魔しないでね」
気だるげに吐かれた言葉には初めての感情が見えた、そして気だるげの中に見えた僅かな敵意は彼女が誰にも心を許さないことを指し示していた。