プロローグ
月光だけが照らし出す闇。町明かりは消えうせて、何もかもが静まり返った世界。自分以外の生物も物も消えてしまったような、そんな雰囲気。
しかし、それを引き裂くような咆哮が、自分の後ろから激しく鳴り響く。夜闇を引き裂いて、光が走る。
終わらない……戦い。終わってくれない、戦い。FINを知らない。知ろうともしてくれない。
それは、人がそうなのではない。人以外の“モノ”がそうだったのだ。誰も、望んでいなくても、それはやって来た。
通信機が鳴り響く。それが、今いる自分への、参戦指示だった。
「水芭蕉機!攻撃態勢に移ります!!」
この戦争。いや、戦争というには少し抵抗があるが、これにこの青年。水芭蕉 晃旗が身を投じたのは1年ほど前のことになる。
日本は“それ”の襲来により、北海道・東北地方が焦土となり、人間が今でも今までも犯してきたような汚染の歴史をはるかに凌駕する速度で壊れていく。
鉄筋コンクリートで出来たビルが軋みを上げ、崩れ去る。アスファルトがまるで紙くずのように吹き飛ばされる。家だったものが瓦礫と化す。線路に停車していた電車が燃え上がる。
この歴史が始まったのは、数年前のことだ。そのとき、始まりの当時は人間は“それ”に抗う力をまったく持たなかった。
日本の自衛隊の誇る最高戦力を投入しても、それでもなお、“それ”は進行を止めず、人々が作りし剣を砕いていったのだ。
しかし、“それ”に抵抗する力を人類は手に入れることが出来た。“それ”が進行を開始してから2ヶ月が経ったころだ。
“それ”の科学名称がAssliyと決まり、それが世間に浸透し始めた時の事だと記されている。俗称AY。人を狩りし天使達のい名となった。
それに抗うべく生まれた2脚歩行型戦闘兵器、TeeX’sと呼ばれる機体の登場である。俗称TX。人類の存亡をかけて戦う戦士の名。
その力により、一時的にAYを殲滅する事に成功し、日本は一時的に復興していくことになった。一時だけの幸福な時間だった。
だが、復興の手が、北海道へと伸びた矢先、再びAYが発見された。それに対し、早急に自衛隊から名を変えた日本防衛軍の誇るTX、『夜叉』と、当時の最新型機の『仙狸』『仙狐』が応戦に向かった。
結果は惨敗。
AYが生物であるという事を、自惚れた人間達は忘れていたのだ。それらは生命体として、進化し、形を変え、今までは対人型に作られていたそれらを、対TX型へと形を変えて現れた。
戦闘になれた熟練兵達が瞬く間に撃破され、最新機の『仙狸』『仙狐』の設計見直しを国会が決定する事となる。
日本は、一回目の戦いを『第一次Assliy大戦』、2回目を『第二次Assliy大戦』と設定し、徹底抗戦を宣言した。
そして、今。水芭蕉という青年の戦いが幕を開けた。