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短編置場  作者: あこな
6/6

僕の宝石

長い話になる予定で考えて、書けなかった残骸(笑)

 この宝石を見つけたのは僕なんだーー。


 忙しなく出入りする使用人達、彼らは朝から屋敷に届く荷物を彼女の部屋に運びいれるのに大忙しだ。僕は窓辺に座って読書をするふりをしながらその様子を眺める。

 大きな花束、豪華な包装の箱は宝石と思われる小さな物から、ドレスサイズの大きな物まで。手紙は準備した箱にまとめられてまずは執事がそれを確認する。

 昨夜は北の侯爵家主催のダンスパーティがあった、国内でも特に大きな力をもつ侯爵家のパーティにはそれは多くの貴族達が集まり、我が家でも家族で招待され参加したのだ。

 それは彼女の初めてのパーティで、華々しくダンスを披露した彼女は見事にその顔を広め、一夜開ければこうして国中の男達からプレゼントが届くという嵐を巻き起こしてしまった。


 だから嫌だったんだ、彼女を外に出すのは。


「あっ、ラウみっけ。ね、一緒にお茶しましょ」


 ぱたぱたと廊下を走ってきて僕の視線に合わせるようにしゃがみこんだ彼女が僕の手から本を奪い去る。広くなった視界に飛び込んできたのはくりくりとした黒い瞳と控え目な鼻、ピンク色の唇。

 サラサラと肩から流れる黒髪は明るい色の多いこの国ではとても珍しい。


「こら、返せ!」


 奪われた本を取り返そうと伸ばした手は空を切り、僕の本を持つ彼女は無邪気に笑いながらヒラリと身をひるがえして走り出す。


「お茶したら返すよ、中庭ね!」


 まったく、誰のせいでこの騒ぎだと理解してるんだろうか。相変わらず忙しそうな使用人達を横目に立ち上がるとのんびりと中庭を目指した。


 中庭に準備されたテーブルに焼き菓子と紅茶が並ぶ。メイドと話をしながら小さな焼き菓子をつまむ彼女が僕に気が付いてヒラヒラと手を降ってきた。僕の紅茶を準備してメイドがそばを離れると、そこには彼女と僕だけになった。


「はい、ラウの好きなフィナンシェ」


 真っ白いお皿に小さな焼き菓子をのせて、差し出される。


「これが好きなのはリィナでしょ?」

「うんアタリ!」

 

 クスクス笑いながら、小さな焼き菓子をパクリと口に入れる彼女はまるで子供みたいだ。


「てか、何でラウは《お姉ちゃん》って呼んでくれないのかな?」


 そんなの決まってる。


「年上だと思えないから」


 至極真面目に答えればリィナはプウッと頬を膨らませる。ほら、そういう顔が子供みたいなんだ。


「でも私の方が2歳も上だもん」


 本当に、これで18歳だって言うんだから驚く。初めて会ったときから変わらない無邪気さは嫌いじゃないけれど。


 彼女が我が家の庭に落ちてきたのは8年前、空から舞い降りた彼女を見つけたのは僕だった。そして、彼女の名をリィナとしたのも僕。

 彼女の本名は高浜莉菜タカハマリナと言うらしいけれど、僕はわざと両親や他の大人にそれを隠した。リィナにもこれからはリィナとして生きるように教えて、真実は僕だけのものにしたんだ。

 だって、初めて目にした時から、彼女は特別だったから。


 国立図書館の古い文献に彼女のような《異世界人》が落ちてきた事があったという記録は見つけた、けれどそれ以外に詳しい事は何も残っていない。もっと知りたくて、時間のあるときは図書館にばかり通っている。


「ねぇ、ラウはいつまでここに居られる?」


 リィナの声に思考を中断させられ、視線を向ける。

 今僕は学校の長期休みで帰省中、休みは2週間ほどあるのでまだ数日はここに居られる。だけど、わざと返事を遅らせるとリィナは言いにくそうに口を開いた。


「毎日、ダンスや刺繍ばかりつまらない。私もラウみたいに学校に行きたかった」


 両手でカップを包むようにして掴み、一心に紅茶が揺れるのを眺めるリィナ。心の中を打ち明けるとき、リィナはこうして視線を下に落とす。


「私、このまま誰かのお嫁さんになって終わりなのかな」


 リィナはこちらに来る前は学校に通って読み書きや計算を勉強していたと聞いた。大きくなったらキャリアウーマンという沢山仕事をする女性になりたいとも。

 しかし、この世界ではそんな女性は稀だ。特に貴族においては、女性は子を生み社交で交友を広めるのが仕事のようなもの、学校に行くようなことすら許されない。

 リィナは今、我伯爵家で僕の姉としてこの家で暮らしている。つまり彼女は誰かの妻になる未来が決まっているようなものだ。

 しかも、彼女に求婚したい男は腐るほどいるというのも事実。


「ならさ、僕の婚約者になれば?」

「えぇぇ!? だってラウは私の弟……」

「弟じゃない、僕の両親はリィナを養女にはしてないんだ。それに僕はまだ学生だ、学生の婚姻は認められていないから僕が学生のうちは婚約者としていられるし、リィナも婚約者探しに堅苦しいパーティへ行く必要も無くなるよ。代わりに毎日本を読んだりビーズを編んだりすればいい」


 リィナがこの世界に来たときに身に付けていたビーズと言う小さな穴の空いた綺麗な石、リィナはそれを編んでアクセサリーや造形を作るのが好きだったらしく、父が馴染みのガラス職人に同じものを造るように頼んでビーズの生産がはじまった。リィナが作ったアクセサリーは母を通じて貴族に広まり、今はリィナに習った専門の職人がいるほどだ。

 ちなみにビーズに関わる全ての権利は我が家が握っていて、リィナのお陰でかなりの財を築いていた。


 こうしてリィナが持ち込んだビーズがこの世界に浸透しても、リィナは新たな形をどんどん創る。リィナの創るビーズは他のどの職人にも真似できない独自性があって、僕たちが見たこのとない不思議な造形はリィナの世界の何かなのだろうと思っている。

 けれど、ダンスやマナーの教育で時間をとられ、最近のリィナは大好きなビーズにすら触れていない事を知っている。

 

 僕の提案にリィナはしばらく無言になる。色々と悩むところがあるのか、すぐに乗ってくれないのには少し悔しくもなる。


「ついでに王都に一緒に行くのもいいと思うよ、あっちではこっちよりも流行が進んでいるし、王都の職人が作ったビーズもすぐに手に入るよ」


 だめ押しの提案に、リィナはパッと顔をあげ嬉しそうな顔をしたけれど、すぐに眉を下げる。


「ねぇ、さっきから何に引っ掛かってるの?」


 こんなにメリットばかりのはずなのにどうして頷かないのかとイラついて訪ねれば、リィナはオズオズと話し出す。


「私のせいで、ラウに迷惑かけるの嫌だなって……私が婚約者になったらラウは本当に結婚したい相手が見つかったとき困るでしょ?」


 はぁ? 何バカなこと考えてるわけ!


「僕が卒業するのは四年後だよ、それから職に就いて経験積んで、本来ならそこから婚約者を探すの。僕より自分の心配しなよ、その頃にはリィナは完全に行き遅れとか言われる年齢だけど良いの?」

「それは、別に気にしないよ。四年後なんてまだ22歳じゃない」

「ならいいじゃん、て言うかそのまま結婚しても問題ないんだし。さっそく父さん達に話に行こう」


 今朝からの様子だと、父さん達はすでに有力な結婚相手を選別しているはずだ。面倒なことをされる前に話をしてしまおうと、僕はリィナの手を引いて父さんの部屋に急いだ。


「父さん、ラウレイオです」


 扉をノックすれば中から声が帰ってくる。良かった、在室だ。

 僕たちが部屋に入ると、父さんは執事と共に届いた手紙に目を通していた、机越しに視線をよこし不思議そうに眉を動かす。


「どうした。二人で」

「僕達の婚約を認めて頂きたくて来ました」


 直球で願い出ると、父さんは目が落ちるほどに見開き固まった。隣の執事がニコニコと笑っているのは流石、僕の心情をお見通しだったようだ。


「本気か!?」


 ダンっと机に両手を突いて勢いよく立ち上がった父さんに、リィナが驚いて身をすくめる。無駄に顔が怖いんだから大きい音出すとか止めてほしい。

 また髭剃るのサボってるし、僕は母さんに似て良かった。


「本気ですよ。父さん達もそれを見越してリィナを今まで養女にしなかったのでしょう?」

「う、うむ。しかし、お前にそんな様子が微塵もないから……正直諦めていた」

「父さんが気付かなかっただけですよ。ねぇ、リィナ?」


 リィナを振り向いてニッコリと微笑めばパッと顔を赤くする。自惚れるつもりはないけど、リィナは僕の顔が好みらしく見つめて微笑むと確実に顔を赤くするのを知っている。

 そんなリィナの反応で真実と信じたらしい父さんは手元にあった手紙をすべて投げ棄てた。


「よし! 今すぐ書類を作成する。リィナ、これで本当に私の娘だぞ」

「いえ、まだ学生なので実際に婚姻できるのはしばらく先ですけど」

「なんと! 学校など辞めてしまえ」


 何ムチャクチャ行ってるんだと冷めた視線を向けると、執事から「あとはお任せを」というアイコンタクトを貰う。それに頷き、僕達は部屋を後にした。


「これでリィナ僕の婚約者だ、まあ、この騒ぎがあるから公表は少し経ってからにしよう。だからって他の男の誘いに乗られても困るけど」

「そんなことしないよ!」


 わざと意地悪な事を言えばリィナはすぐに反論を返してくる。リィナを見れば彼女はまだ赤い顔をしていて、思わず口許が緩んでしまった。リィナが僕のことで心を乱すのを見るのは嬉しい。

 もっと掻き乱してやりたくて、リィナに近づき髪を撫でる。前髪をそっと避けて丸いおでこにキスを落とすとリィナはプルプル震えてさらに顔を赤くした。

 羞恥に耐えて涙目とか、可愛いすぎて鼻血出そう。

 ニヤニヤしながらリィナを見下ろしていると、突然彼女は顔を上げ、精一杯に睨んできた。


「ラウも私の婚約者なんだから、他の娘に目移りしちゃダメだからね!」

「へ?」


 思わず変な声が出たのは、完全に予想外の言葉だったからだ。

 ポカンとする僕に彼女は赤い顔のまま満足げに笑うと「引っ越しの準備する」と自分の部屋へと行ってしまった。

 リィナの背中を見送りながら考える、今のは束縛を意味する言葉だろうか。

 他の娘に目移りなんてするつもりもないし、するわけがないのだけど。こうして言葉にされるのも悪くないなと思ってしまった。



 王都にある屋敷に戻ったのはそれから2日後、リィナがこちらで暮らすと言うことで馴染みの使用人が数人追いかけてきた。

 社交の季節でもあるし、数週間後には両親もこちらへ来ることだろう。

 寮から屋敷へ身を移すとは言っても、僕は日中のほとんどの時間を学校で過ごすので、リィナの周りに気の知れた者が居てくれるのは歓迎だ。

 リィナのために王都のビーズ工房で新色のビーズを買い込み、彼女はさっそく夢中でビーズを編んでいる。

 ご機嫌なリィナの姿を目に焼き付けてから学校へ向かうと何故か僕のロッカーが花束で埋まっていた。


「僕、モテモテ?」


 そんなわけないと解っていながら口にすれば、すぐさま友人のハデルがからかいにくる。


「なあ、ラウレイオ。黒髪の女神に会わせてくれよ」

「誰それ」

「お前の麗しのお姉さまだよ!」

「リィナは姉じゃないし、もう婚約者も決まったよ」


「「「何ぃ!!!?」」」


 若干他人の声が混じったのは、近くで聞き耳をたてていた奴らだろう。

 ロッカーを埋める花束やプレゼントはそのままに、必要な道具だけを取り出すと教室へ向かう。ハデルも僕の隣に並んでさらに話しかけてきた。


「決まったって、相手は誰だ?」

「そのうち解るよ」

「俺にくらい教えてくれよ~」

「君に教えたらすぐに広まるからね」


 適当に流しているうちに講義が始まる、久し振りの授業は国の歴史。のんびりとした口調の先生の話を聞きながら、久し振りに図書館で本を借りたいと思い立つ。

 リィナの好きそうな創作文学も借りてあげようと考えて思わずにやけそうになる。頭を降って気を取り直すと、講義に集中した。


 大量の花束とプレゼントを持ち帰るため、馬車を借りて帰宅した僕をリィナがで迎えてくれた。


「ラウ、おかえりなさい」


 長い髪を三つ編みにして纏めているところをみると、今日は1日創作を楽しんでいたらしい。


「ただいま、学校でもリィナへのプレゼントだらけだったよ」


 手近にあった花束をつかんで渡してあげると、何故かリィナは怪訝に眉をひそめる。花は好きなはずなのにどうしてだろうと首を傾げていると、リィナはそれを僕に突き返す。


「いらない」


 一気に不機嫌になってしまった理由がわからない。宝石の方が良かったのかな。

 

「あ、そうだ。本を借りてきたんだけど読む? リィナの好きそうなのあったんだ」


 花束は使用人に渡して、鞄を探って本を差し出すとリィナは一変して嬉しそうな顔になった。


「ありがとう、嬉しい」


 僕から受け取った本をぎゅっと胸に抱く姿にホッとする。なんだ、リィナは花や宝石より本が良かったのか。


「私もラウにプレゼントがあるの、来て!」


 華奢な手に引かれて家に入り、リィナの部屋に招かれる。テーブルには色とりどりのビーズが広がっていた。

 リィナは箱を探ると何か紐のようなものを取り出し見せてくれる。


「ビーズと革紐でブレスレットを作ったの。こうやって2重に巻いて結ぶんだけど、男の人が着けても格好いいでしょ?」


 成る程、今度は男性向けのアクセサリーを考えたのか。細い革紐を編みながらビーズを通したらしい、2重に巻くことで存在感も出て、確かに格好いい。


「くれるの?」

「もちろん、ラウのために作ったの」


 ほうっと、暖かくなる胸に自然と笑みが漏れる。リィナはすごい、いつも僕の幸せになることをしてくれるから。


「ありがとう」


 感謝を口にすればリィナは花が咲くように笑う。

 この笑顔は僕だけの物だ、今も、この先もずっと。


 夕食までの時間に学校の課題をこなしているとリィナが部屋にやってきた。


「ラウ、ここで本を読んでも良い?」


 彼女が持ってきたのは今日僕が借りてきた本。ちょっと嬉しくなって部屋に招き入れるとリィナはソファに座って本を開く。楽しそうな横顔を確認してから課題を再開する。しばらくして不意に視線をあげると、リィナと目が合う。ビックリしているうちにリィナが慌てて視線を本に落としたのをみて思わず苦笑してしまった。


「リィナ、何か話があるの?」


 ペンを置いて机からリィナの横に移動すると、リィナはブンブンと頭を振る。


「何でもないよ、勉強に戻ってよ」

「だって、視線を感じて集中できない」


 嘘だ、リィナの視線に気が付いたのはたまたま。けれど、集中力が途切れたのは本当だ。キリも良いしちょっと休憩しよう。


「この本面白い?」


 リィナの膝の上の本を覗き込みながら問えば、リィナは「うーん」と少し微妙な反応。

 残念、好みとはちょっと違ったみたいだ。


「ラウは? 勉強大変?」


 誤魔化すように話を変えられるけれど、気にしない。僕が「大変だけど楽しい」と返すとリィナは心底羨ましいとため息をはいた。


「学校いってるときは勉強メンドイって思ってたけど、行けなくなると、無性に勉強したくなるんだよね。本当なら今ごろ高校行って、大学受験にピーピー言ってたのかな、とか考える」

「リィナはもとの世界に帰りたい?」


 この質問久し振りだ。リィナが元の世界の事を話すたびに聞いてしまう。


「ん~、どうかな、今さら戻ってもきっと戸惑う」


 初めは「帰りたい」と即答していたリィナの答えが変化したのはいつだったか。この世界で生きることを覚悟したリィナの気持ちを知ったとき、僕もリィナを守りたいって決めたんだ。


「リィナのことは僕が幸せにしてあげるから心配しないで」


 少しでもリィナの不安が消えるようにと、リィナの頭を引き寄せ額にキスを落とすと、リィナは頬を染め、その変化がとても嬉しい。


「前から思ってたけど、ラウって自然にキスしてくるよね」


 そうだっけ、と首をかしげると何故かリィナは眉を潜め僕を見上げてくる。


「他の女の子にも同じようにするの?」


 リィナの言葉に思わず眉を寄せてしまう。

 そんなことするわけ無いじゃないか、僕が触れたいのはリィナだけだし、そもそもリィナ以外の女性で話をするのは使用人達くらいのものだし。

 けれどリィナはなにかを勘違いしているようでまだ僕を睨んでいた。


「キスが嫌ならもうしないよ、どうせ仮の婚約者だもんね」

「え、違う。そうじゃなくて」

「じゃあ、何が言いたいのさ」

「ラウの女の子慣れしてる感じが心配なの! 他の子にも気軽にキスするのとか、なんか嫌なんだもん」


 なにそれ、リィナってばあり得ないことにヤキモチやいてるわけ?

 ほんと、リィナのこう言うところ可愛いよなぁ。


「あのね、僕はリィナにしかキスしないよ」

「ほんと?」

「ほんとだよ、リィナってそんなに僕のこと好きだったんだね」


 ニヤニヤとからかうような視線を送ると、リィナは顔を真っ赤にして目を丸くしていた。


「可愛い、大好きだよリィナ」


 思わず気持ちを伝えてしまい、今度は自分が慌てる番だ。リィナの隠れ蓑として婚約者の地位を確保しつつ、時間をかけて気持ちを伝えていく予定だったのに。リィナがそばにいることが幸せ過ぎて思わず口を出てしまった。

 僕って、こんなに不用意な奴だったっけ?

 口元を押さえて視線を逃がすと、突然リィナが飛び付いてきた。


「やっと、言ってくれた」

「え?」

「ラウが私を好きって、言ってくれた」


 突然どうしたのだろう、リィナの行動に戸惑っていると、リィナは体を放して僕をみつめる。


「ラウはずるいのよ、思わせ振りな行動はするのに言葉はくれない」

「へ?」

「婚約者のふりとか遠回しなことばかりするし。クールなふりして私の事大好きっていつもバレバレ。そんな所も好きだから気付かないふりしてたけど、好きなら好きって、言われたいの」


 リィナの言葉に、カァァと顔が暑くなる。なんか今、メチャクチャ恥ずかしくて情けない事言われた気がする。


「もっと伝えて? そして私を本当の婚約者にして?」


 リィナはこんな女の子だっただろうか。僕が本音をさらした途端、まるで別人のように積極的だ。ドキドキと早くなる心臓が苦しい。


「莉菜が、好きだよ」


 おねだりに答えた僕に、リィナは顔を輝かせ、そしてフワリと唇を合わせてきた。まさか、初めてのキスを彼女に奪われるとは思っていなかった。


「私はずっとラウのものよ、だからラウも私だけのもの」


 いつも恥ずかしそうに微笑む彼女がみせた妖艷な笑み。僕の拾った宝石は、とんでもない魔宝石だったのかもしれない。

 けれど、どんな彼女でも大切であるのは変わらなくて。

 まだまだ知らない彼女の顔を知るのが楽しみだ。


 大切にしてあげるよ、宝石箱のなかで、さらに磨いて輝かせるのは、僕だけの楽しみだから。



END. 



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