~ 8 ~
私はオールトという街にあるルーヴィエ修道院から、この町に来ました。
一ヶ月ほど前から、修道院で暮らす修道士・修道女たちに変化が起き始めたのです。
私たちは清貧・貞潔・服従の三つの修道誓願を立てて生活していたのですが、日に日にその誓いを破り街に出て遊ぶ者が増え始めました。
それと同時期に次々と街で殺人事件が起き始めたのです。
街の人々は修道院の乱れが女神様の怒りに触れ、今回の事件を招いたと思っています。
悪い噂は瞬く間に広がり、今では修道院に巡礼する者は皆無となりました。
更に悪いことに、誓いを破った者が修道院を去るばかりではなく、自分達も同じ目に遭うのではと考える者達が現れ、次々と修道院を去っていきました。
今では半分以下の人数しか残っておりません。
それでも、この現象は続いています。
私は修道士や修道女たちが、本心で誓いを破ったとは思えないのです。
きっと、悪魔か何かに取り憑かれたに違いありません!
「ご主人様~! また考えことですか~?」
レイヴァンはベッドの上でエリィの話を思い出していた。
そこへ突然リルの無邪気な声が響く。
「また酔っているんじゃないだろうな?」
「今日は酔ってないです!」
「なら、明日に備えてさっさと寝ることだ」
「解ってるです!」
そう答えるも彼女の目は爛々と輝いている。
「どうした?」
「おやすみのキスして欲しいです! おでこで良いです!」
「寝ろ」
レイヴァンは要望に一切応じず彼女に背を向けて目を閉じた。