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「でも今更戻って大丈夫かよ。 俺は勝手に居なくなっても問題ない立場だけど、お前は……」
「間違いなく極刑だろうな」
「ど、どうするんだよ!?」
「さてね、なるようにしかならないさ。 最悪国ひとつ敵に回すだけだ」
「だけって…… 無茶を簡単そうに言うなよ」
「冗談だ。 とりあえず封印の楔とメフィストフェレスは間違いなく関係がある。 さらにミレーニアと瓜二つのマリアンが居て、彼女もまた封印の楔だと言われている。 どう転んでもロディニアに何かしらの答えがあるはずだ。 これで行かない理由はないだろ?」
「確かにそうだな」
街の境にたどり着くと旅立つ四人は振り返り、残る二人を見つめた。
別れの時がきたことで当初の陽気さが嘘のように皆無言になっていたが、マリアンが最初に口を開いた。
「ウィル院長、再建で忙しい中、手伝いもせずに旅立つわがままな私をお許しください」
「わがままなんかではありません。 これはあなたが選んだ新しい道です。 どこに行ってもミカエリス様の教えを守り、しっかりと生きていきなさい。 何よりレイヴァンさんたちのご迷惑にならないようにするのですよ」
マリアンはしっかりと頷くとウィルと向き合い互いに手を合わせる。
そして頭を垂れると祈りの言葉を呟いた。
続いてマリアンはエリィを見つめ手を握る。
「エリィさん、子供たちを守ってくれて本当にありがとう。 これからも子供たちのことをよろしくお願いしますね」
「はい、お任せください。 それよりも本当に子供たちに会わないまま行かれるのですか?」
「本当ならお別れを言いたかったわ。 ……でも、彼らに会ったら旅立つ決意が揺らいでしまいそうだから」
「それもそうですね。 子供たちにはマリアンさんは長い御勤めに出たと言って聞かせます。 ……ですから、いつか必ず」
「もちろん戻ってきます」
マリアンはエリィを抱きしめると先ほどと同じように祈りの言葉を呟いた。
「別れの挨拶が済んだのなら行くぞ」
レイヴァンがタイミングを見計らい声をかけると彼女は静かに頷いた。
「レイヴァンさん、ありがとうございました。 そして、よろしくお願いします」
歩き出す彼らの背中に向かってウィルとエリィが声をかけると、彼は振り返ることなく軽く手を振り上げた。
魔天創記(参)に続く。




