~ 69 ~
しばらくしてマリアンはスープを持って部屋に戻ってきた。
「宿の方にスープを作っていただきましたから、皆さんでいただきませんか? ……って、あれ?」
居るだろうと考えていた二人が居ないことに気がつくと、不思議そうに首を傾げた。
「ブライトさんとリルさんは?」
「明日の出発に備えて買い出しに出て行った」
「そうだったのですね。 どうしましょう、てっきり皆さんが居ると思ったので三人前用意していただいたのに、これでは余ってしまいます」
「それなら心配はいらない。 リルは街でつまみ食いしてくるからこちらで用意する必要はないし、ブライトなら多少冷えた料理でもお構いなしに食べる。 一つを残し二人で先に食べないか? さすがに三日何も食べていないとなると空腹で仕方がない」
「私は別で食事を済ませましたので結構です」
「さっきまで俺の看病をしていたあんたが食事をする暇なんてなかったはずだ。 そんなことでいちいち嘘をつくな。 何事にも感謝する修道女なら冷めないうちに食べるのがコックへの礼儀だろう」
レイヴァンは話しながらスープの入った皿を手に取るとスプーンで掬って口に運び、ゆっくりと空腹に流し込んだ。
染み渡るとは、まさにこのこと。
彼の言葉と表情にマリアンも観念したのか、スープを机に置き感謝の祈りを捧げると食事を開始した。




