~ 62 ~
見えない力で押さえつけられ右手が思うように動かせないのが悪魔にも解った。
あの剣で斬られたら間違いなく終わり。
……その前にとどめを刺す!
悪魔は残る力を振り絞りレイヴァンとの間合いを詰めた。
「我求めるは聖なる加護。 我求めるは聖なる剣」
レイヴァンが押さえつける力に抗い右手を握りしめると、甲の痣が裂けて血が吹き出した。
それでもさらに力を込めると、ついに美しく輝く一振りの剣がその手に現れた。
彼が握りしめた剣を払うと光の粒子が舞い上がり微かに煌めく。
悪魔は剣の存在に気がつき動きを止めて彼を睨むと、光る剣と共に背中には白く輝く翼が見えた。
その姿はまさに憎き天使ミカエルを彷彿とさせる。
自然と剣を握る力が強くなり、歯ぎしりをしていた。
次の瞬間には罵声と共にレイヴァンに斬りかかる。
剣が交わると悪魔はただならぬ雰囲気の正体を知った。
この人間は、未だ意識を失っている。
事実に驚いた一瞬の隙に自分の剣は弾かれ宙を舞っていた。
悪魔は翼を羽ばたかせ後方に飛び去るが、レイヴァンは即座に追いかけ間合いをとらせなかった。
無言のまま剣を振るうと光をまとった刃が悪魔の右腕を切り落とした。
「ミカエル! 貴様はこの時代でも人間に肩入れし、我らに楯突くのか!」
激しい痛みを堪えながら悪魔は叫ぶ。
「だが、私一人を消したとしても他の悪魔が貴様を殺し、封印の楔を解き放つ! 貴様の理解者であるラファエルもガブリエルも二度と蘇らぬ! 貴様一人が抵抗しても時間の無駄だ! ルシファー様は必ず……」
レイヴァンは問答無用で相手を斬り伏せていた。
その場に仰向けに崩れ落ちた悪魔は目の前に見える憎き天使を睨みつける。
「必ずや我らの前に!」
詰め寄ったレイヴァンは止めと言わんばかりに相手の胸に剣を突き立てた。
「さらばだ、アスモダイ……」
悪魔が呻きながら光に包まれて消滅すると、レイヴァンも糸が切れた人形のようにその場に倒れ込んだ。




