~ 58 ~
レイヴァンは呼吸を整えながら崩れた納屋を見つめていた。
たった今、強打で悪魔を吹き飛ばし瓦礫の下敷きにしたところだ。
このまま立ち上がってこないと良いのだが、悪魔は何事もなかったかのように姿を現す。
「正真正銘の化け物だな」
怒りが静まったわけではないが攻撃の手を休めたことで幾分冷静になれた。
こちらが徐々に疲労しているのに対し、相手は疲れた様子を見せない。
それにいくつか怪我を負ったはずなのに、いつの間にか癒えている。
回復をする暇は与えなかったはず。
これは何かしらの秘密があるに違いない。
このまま時間をかければ霊力を消耗し自分が不利になるのは目に見えている。
早いところ手を打たなければ。
レイヴァンは剣を強く握りしめた。
この状況下で止まっていても意味がない。
剣を交えながら見つけるしかない。
彼はさらに手数を増やして攻め立てたが、考えている一瞬の隙に相手の剣が右腕をかすめた。
微かな痛みを堪えて剣を打ち返すが、悪魔は先ほどより大きな火球を炸裂させていた。
今度はレイヴァンが吹き飛ばされた。
背中から壁に打ちつけられ、むせかえると血が混じる。
この痛み、骨が二、三本折れたか。
何とか両足で自立するものの悪魔は有無をいわさず追撃に来る。
咄嗟に光をまとい移動術でその場から離れると体勢を整えた上で相手に声をかけた。
「何処を見ている?」
痛みを隠し笑みを浮かべると相手は歯ぎしりしたように見えた。




