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「安否を気遣うのは間違いのようだ」
彼女たちの会話を遮るようにレイヴァンは前に進み出た。
「どうしたというのですか?」
「聖職者が禍々しい力を放つものか」
ウィルの質問に答えると剣を抜き、まっすぐ相手に突きつける。
「人間よ邪魔をするな。 我は今、その娘に用がある」
「生憎だが悪魔の指示に従うつもりは無い」
「ならば封印の楔の前に貴様を消し去るのみ」
「俺もあんたを消し去るのつもりだ」
修道女二人が戸惑う中、レイヴァンはゼノ司祭に斬りかかった。
間合いを詰め剣を振るうと、老人は後方に跳躍して攻撃を軽やかにかわす。
「焦るな人間。 この体は動きづらいのだ」
「悪魔の都合など知ったことか」
「今から本当の姿を見せてやろう」
言い終わるや否や司祭の体は黒い炎に包まれた。
同時に魔力が膨れ上がったのが解る。
炎が消えるとそこには褐色の肌に紋様を持つ大男がいた。
人間で言えば四十代であろうか。
たくましい体つきはブライトを凌駕している。
肌と紋様は先日のルーマと同じ。
違ったのは背中に生えた黒い羽根の翼。
目にしたレイヴァンから不思議と笑みがこぼれた。
嫌でも過去を思い出す。
黒い羽根の翼を持つ悪魔との遭遇はこれで二度目だ。
感じる魔力が似ていることからも今までで一番奴に近づいたと確信できた。
「メフィストフェレスはどこにいる」
「知らぬな」




