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「こ、これほどまでとは……」
修道騎士団長のアンディは聖堂内の床に剣を突き立て片膝を着きながら呼吸を整えていた。
それから持ち上げた顔には明らかな焦燥が見て取れる。
「キサマは化け物か」
「お前みたいに悪魔じゃないことは確かだな」
対して息一つ乱れていないレイヴァンが院長の前に立ち塞がり平然と答えると、彼は短い言葉で悪態をついた。
「封じられる前に質問には答えてもらわないとな」
「誰が答えるか」
彼は握った剣を支えに再び立ち上がろうとするものの身体が思うように動かないのか、その場に崩れ落ちた。
そしてぴくりとも動かなくなる。
その様子を見ていたリルが「やったです!」と嬉しそうに声を上げ「とっとと封印しちゃうです!」と袋から少し大きめの精霊石を取り出してアンディに駆け寄ろうとした。
それを主人のレイヴァンが慌てて呼び止める。
「リル! まだだ!」
「うきゅ?」
彼女が不思議そうに首を傾げた瞬間アンディの身体から大きな影が飛び出し、同時に禍々しい魔力が聖堂内に広がった。
「で、出たです〜!」
リルは慌ててレイヴァンの後ろへと逃げ帰ってくるとコートの裾をぎゅっと握り、恐る恐る顔を覗かせる。
「ご主人様、早くやっつけちゃってくださいです!」
「だったら今すぐその手を離せ」
「あっ、ごめんなさいです」
リルがパッと手を離すと、それを合図にしたかのようにレイヴァンは大きな影に向かって間合いを詰める。
そして一気に剣を薙ぎ払ったが、繰り出した斬撃が相手を捕えることはなかった。




