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子供たちを助けるため火の手の強い修道院の奥へ行こうとするマリアンをブライトが必至に引き留めていると、一人の修道女が脚を引き擦り呻き声を上げながら二人に向かって歩いてきた。
彼女の白い装束は赤く染まっている。
そしてついに力尽きたのか二人の目の前で倒れると指先を痙攣させたまま、その場から動くことはなくなった。
「た、たいへん! 助けないと!」
「あぁ!」
二人が傷ついた彼女を助けようと近寄って腰を下ろした時、奥から誰かの叫び声が聞こえてきた。
「そいつに近づくな!!」
突然の声に顔を上げると見慣れないハンターが二人に向かって勢い良く走ってくる。
そして大きく跳躍すると着地と同時に倒れた彼女の背に剣を衝き立てた。
二人には何が起きたか理解できなかった。
ただ目の前で起きた惨劇が、彼女の力ない断末魔が、何度も脳内で繰り返された。
「おっさん! 何てことするんだ!」
ブライトは我に返るとハンターの胸倉を掴んで詰め寄った。
「この、何をする! 放せ! こ、こいつは、悪魔なんだ、化け物なんだぞ!」
「どこが悪魔だ! どう見たって普通の女の子だったじゃねぇか!」
二人が激しく言い争っている間、マリアンは腰を落としたまま二度と動くことの無い彼女を見つめていた。
そして一滴の返り血が頬を伝い顎から地面に落ちると、それを引き金にしたかのように悲鳴を上げた。




