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レイヴァンはリルを自分の前に乗せて馬を走らせていた。
徐々に修道院が大きく見えるようになってきたが、まだ着きそうにはない。
近づくにつれ強くなる不気味な魔力を風と一緒に感じながら、これまでに起こったことを振り返っていた。
今回の事件は腑に落ちない問題がいくつも起きている。
そして解決できないまま振り回されている。
噂だと街の人間が次々と殺されていて、その原因が修道院にあるということだった。
しかし実際は修道院を出た人間が何かの理由で街で殺されていただけ。
事件解決を目論んでいたハンターが殺されたことを考えると修道院の中に何かしらの問題があることは間違いない。
ひねくれた考えをするなら風紀の乱れという不祥事を隠すために自ら事件を起こしたとも考えられる。
襲ってきた修道騎士団ならやりかねない。
街の人間たちにとって今回の事件は無関係だからこそ、奇怪な事件が起こる修道院を忌み嫌うようになった。
そう考えると修道院を消すために街の人間が火を放ったとも考えられる。
だが、それだと離れていても強く感じる魔力の説明がつかない。
間違いなく、これは悪魔の力だ。
「リル、しっかり捕まっていろ。 落ちたらそのまま置いていくからな」
「はいです!」
レイヴァンの強い口調に慌てて目を瞑り意識を集中すると、リルは瞬時に黒猫へと姿を変えた。
そして主人の懐へと潜り込むと一鳴きする。
二日ほど院内を見て回り疑わしい奴がいることが解ったものの悪魔そのものは見つけることができなかった。
そうなると定期的に修道院にやってくるのか、完璧に誰かに化けて身を潜めていたか。
確信は持てないが、どちらにせよ戻れば直ぐに解ることだ。
「ブライト、俺たちは先に行く」
「わかった」
大人二人が跨っている馬はどうしてもスピードが出ない。
今は一刻を争う時。
レイヴァンはマリアンを乗せて後ろを走るブライトに一言断りを入れると、馬を更に走らせた。




