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「なかなか良い眺めですね」
火災の広がるオールトの街と逃げ惑う人々を修道院の屋根の上から不敵な表情を浮かべて眺める二人がいた。
「火なんぞ放ちおって目的を忘れているわけではあるまいな、アンシティフ」
「ご安心下さい。 アスモダイ様。直ぐに封印の楔を見つけ出して見せます」
「逃げられたらどうするつもりだ」
「そう心配なさらないで下さい。 既に次の手は打ってあります。 封印の楔を見つける前の余興として面白い光景をご覧に入れますよ。 街の火災が広がり修道院が燃えるだけじゃつまらないですからね」
アンシティフが大声で笑うと、地上へ下りるために滑空を始めたかが、何かを思い出すと同じ場所に舞い戻ってきた。
「忘れるところでした。 封印の楔を探していたところ院内で面白い物を見つけましたので献上させていただきます」
アスモダイが差し出された物を見ると、それは小さな指輪だった。
「この指輪、天使の力を感じるな」
「はい、おそらく天使ラファエルの指輪かと」
「……ほう、やつの指輪か」
それは面白そうだとばかりにアスモダイは指輪を身につけた。
「ミカエルと違い、こちらは従僕よ」
「それでは封印の楔の所へ行って参ります」
アスモダイが高笑いを始める中、アンシティフは一礼した後、地上へと降りた。




