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「リル、先に来た道を戻って馬を探せ! これだけの金ではニ頭買えないかもしれないが、なんとかしろ!」
「わ、わかったです!」
「最悪一頭だ」
「待ってくれ!」
リルが駆け出そうとすると捕まえていた男が声を上げた。
「まだ邪魔するつもりか?」
レイヴァンがすかさず剣を抜いて男に詰め寄る。
「ち、違う! お前ら、この広い街で馬なんかを簡単に探せると思っているのか?」
「何が言いたい」
「この街道をしばらく戻って初めての十字路を右に曲がり、更にしばらく行った所に運送を生業にしている商人が居る。 そいつなら多くの馬を所有しているはずだ」
「本当だろうな?」
「この期に及んで嘘なんかつかねぇよ。 それにそこの商人は少々癖のある人間だからな、よく覚えている。 看板も出しているから直ぐに解るはずだ」
男の話を聞いてしばらく考えたレイヴァンはリルに声をかけた。
「リル、今の話聞いていたな?」
「ばっちり聞いてたです!」
「なら頼んだぞ」
「はいです!」
「馬を入手したら十字路で待っていろ」
リルは大きく頷いて、直ぐに走りだした。
そして駆けながら意識を集中すると、すぐに身体が淡い光で包まれる。
次の瞬間、彼女は小さな黒猫に姿を変えていた。
黒猫になったリルは勢い良く駆けて、あっという間にレイヴァンたちの視界から見えなくなった。
「俺たちも急ごう」
レイヴァンは突然黒猫に姿を変えたリルを見て呆然としているマリアンの手を引くと、オールトの街を目指して駆け出した。




