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「ご、ご主人様!」
尋問するレイヴァンの言葉を遮り、突然リルの声が響いた。
「こんな時に何だ!」
「あ、あそこを見てくださいです!」
ばつが悪そうにレイヴァンがリルを睨むと、彼女はあたふたしながら何処かを指している。
その横ではマリアンが呆然とした様子で地面に座り込んでいた。
レイヴァンが男を捕まえたままリルの指す方を見ると、異様な光景が視界に飛び込んできた。
「まさか!」
思わず声が出た。
日が沈んだ西の空の下、オールトの街北部に赤く輝く大きな光が見える。
それはまさに炎が発する光であった。
距離と光の強さからして大火災だ。
「どういうことだ!」
「そ、そんなこと、俺たちだって知らねぇよ!」
捕まえている男は本当に何も知らない様子で必死に首を降り続ける。
レイヴァンは舌打ちすると手荒く相手を解放し剣を鞘に戻した。
「マリアン、急いで修道院に戻るぞ!」
「え? ……あ、はい!」
急いで戻ると言ったものの、一日がかりで歩いてきたこれまでの長い距離を、容易に戻れるとは思えなかった。
とても走り続けられる距離ではない。
だからと言って、このまま街が燃えていくのを見過ごすわけにも行かない。
炎の位置が町の北部であることから推測して、修道院の近くで火災が起きているは間違いない。
今回の事件のことを考えれば、燃えているのは修道院そのものである可能性が高い。
考えた後、レイヴァンはブライトから金貨の詰まった袋を受け取ってリルに渡した。




