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「だから院長が街の外へ助けを求めるようにと仰いました。 でも…… 腕利きのハンターさん達でさえ次々と殺されるような修道院に来て頂ける方が居るとは思えませんでした」
「だから、少しだけ問題を偽って別の街のハンターを探していたと?」
「事情を知らない方なら来て頂けるのではないかと考えたのです」
次第に彼女の目には涙が溜まり始める。
「黙っていたのはウィルの指示か?」
「いいえ、ウィル院長はありのままを伝えるようにと仰いました。 偽ったのは私の勝手な判断です。 どうか、お許し下さい」
「謝罪を伝える相手が違うと思うが?」
「いいえ、何の関係もないレイヴァンさんたちに嘘をつき恐ろしい事件に巻き込んでしまった。 とても許されることではありません。 どんな罰をも受ける覚悟です」
跪き頭を垂れる彼女にレイヴァンは思わず一つ息を吐く。
「俺たちは個人的な目的ここに来たんだ。 あんたが嘘をつこうが関係ない。 それに穏やか過ぎて恐ろしい目にも遭っていないからな。 謝られる理由が解らない。 罰を受けたいのなら勝手に受けるが良いさ。 それよりも今の話で修道院が全ての元凶ってことがはっきりしてきたんだ。 むしろ幸いだろう。 後は、悪魔が修道院の関係者を狙う理由が解れば直に解決する」
「理由ですか?」
「この大きな街のハンターが殺されたとなれば今回の事件の犯人は中級以上の悪魔だと考えるのが妥当だろう。 なら、その悪魔が何のために今回の事件を起しているのか、それが解れば……」
「皆目検討もつきません」
「修道院の人が減り続けるとどうなるか」
「単純に考えれば人が居なくなりますね。 ……この修道院内に何か大切な物が隠されているとか? 我々が居るとゆっくりと探せまんし」
「そんなところだろうな。 あるいは単純に人間を殺して楽しんでいるのか」
そう話して、レイヴァンは壁にもたれていた体を起した。
「邪魔をしたな」
「いえ、そんな」
「さて、次はどこを調べてみようか」
歩き出したレイヴァンは、ふと立ち止まる。
「エリィ、あんたはこの世の中に完璧な人間がいると思うか?」
「いいえ。 完璧な人間など……」
「俺も同じさ。 どんなに偉い貴族でも農夫でも、金持ちだろうと乞食だろうと何かしら欠けた部分がある。 故にそこから妬みや僻みが生まれ恨みに変わる。 そして、その心を悪魔に弄ばれる」
「急にどうされたのです?」
「もちろんそれは女神に仕える者にも当てはまる」
「おっしゃっている意味が……」
「最後は独り言だ」
レイヴァンはエリィに挨拶を済ませると聖堂を後にして院内の他の建物を前日同様隈無く見て回った。




