~ 27 ~
翌朝も前日と同様にブライトとリルの二人は街に出た。
予想以上に貴重な情報を手に入れて戻ってくる彼らなので拒む理由は何もない。
レイヴァンは快く二人を送り出すと、眠る直前にまとめた考えを確かめるべく聖堂に足を向けた。
扉を開けると十人近い修道女たちが堂内を隈無く清掃していた。
彼女らがこれほどの人数で集まっているところを見るのは此処に来てから初めてだ。
何か特別なことがあるのかと机を水拭きしていた修道女に尋ねてみたが、単純に日課だと笑顔で答えられた。
訳の分からない事件が起きている中で未だ正気を保ち、院内で生活を送っている彼女らは奇特な存在だと感心しながら奥へ進むと、ようやく目的の修道女がいた。
早速話を聞こうと名を呼ぶと、呼ばれた彼女エリィは壁にはめ込まれた瑠璃細工の窓を拭く手を止めこちらを振り返った。
「レイヴァンさん!」
「気にせず続けてくれ。 それより少し聞きたいことがある」
「なんでしょうか?」
レイヴァンは壁にもたれると話し始めた。
「今回の事件で街の人間が殺されているという話は嘘なのではないか?」
その一言に彼女がぴくりと反応し再開した作業の手が再び止まる。
「正確に言えば少し違っている。 街の人間が殺されるにしても対象が元修道士か修道女に限られている。 死体にはまだ一体しか出逢っていないが、昨日ブライトとリルの二人が街の人間から話を聞いてきた。 ……違うか?」
エリィはうつむいたまま一向に話そうとしない。
それでも表情を隠そうとしないあたりが良くも悪くも修道士たちらしい。
彼女の様子を見てレイヴァンは自分の推測が強ち間違ってはいないと確信を得た。
しばらくの沈黙の後、彼女がようやく口を開いた。
「正直に話して助けて頂けるのか不安だったのです」
「どういうことだ?」
「皆の様子がおかしくなった時、悪魔の仕業だと嗅ぎつけた街一番のハンターが修道院に来て事件解決に乗り出しましたが、数日後に遺体で発見されました。 その後、同じようにやってきた数組のハンターたちも……。 修道院に近づくハンターや修道院を離れる人たちが次々と殺されていく間に人々の恐怖は膨れ上がり、いつしかここは呪われた修道院と呼ばれるようになりました」
「それで街の人間は先日の殺害現場のように修道院関係者の存在を忌み嫌うようになったと言う訳か」
エリィは静かに頷いた。




