~ 26 ~
「ところでレイヴァンはどうなんだ? この辛気臭い所に居て何か解ったか?」
「何もない」
「何だ、珍しく空振りかよ」
「いや、そうではなく、あまりにも何もなさすぎるということだ。 これだけ悪魔の仕業だと騒いでいるのに、その悪魔の痕跡が院内には一切見当たらない」
「何だよそれは」
「考えられるひとつとして、ここの人間が全員嘘を付いている」
「神に仕える修道士たちが集団で嘘を? 笑い話だ、それこそ悪魔に摘まれた……」
ブライトは自分で言った言葉に驚く。
「そういうことだ。 この修道院の全てが悪魔の仕業なら一部で痕跡を残したとしても解らない」
「たしかに全員がグルということはあり得るかもな。 だけど、そんな話今までに一度も聞いたことがないぞ?」
「俺もだ。 だからあくまでも可能性のひとつだな」
「……あの、ご主人様?」
レイヴァンとブライトの会話が一段落したところでリルが声を上げる。
「難しい話は苦手なので、リルは先に寝ようと思うのです」
「話すことがないなら休んで良い」
主人は実に素っ気ない態度で返事をしたのだが、今の彼女は眠気が勝るらしい。
「では、お言葉に甘えて、おやすみなさいです」
何事もなかったようにシーツの中に滑り込むとすぐに眠りについた。
彼女が眠ったのを見届けるとレイヴァンは再び口を開いた。
「何もないと言ったが、気になる奴は見つけたんだ」
「なんだ、目星はついているのかよ」
「まだ何の証拠もない、ただの推測だけどな」
「お前の直感は並みじゃないから、そいつが悪魔だな。 そうとなれば、これ以上話しても無駄だし俺も寝るとするか。 明日はその悪魔の尻尾を掴んで、ブッ倒そうぜ」
ブライトは反論の隙を与えずに背を向ける。
そして片手を振り上げて挨拶を済ませるとすぐに息を立て眠りについた。
レイヴァンもランプの火を小さくするとベッドに横になった。




