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「ここに来る前に立ち入り禁止の建物を見つけたんだが、そこは何がある?」
「そこはゼノ司祭がお休みになっている建物なんです。 病が移ったりしないようにとゼノ司祭ご自身が立ち入り禁止にされたんですよ」
「なるほどな。 ただ、さっき俺ぐらいの騎士が、その建物から出てきたのだが特別に入れる人間はいるのか?」
「お世話する者以外で入れる者はいないはずですが……」
マリアンの説明を聞いたレイヴァンの表情が厳しくなった。
「黒い髪で俺とそう変わらない背丈、そしてそれなりに腕が立ちそうな騎士に覚えはあるか?」
彼女が返事に答えあぐねているとレイヴァンは更に付け足す。
「あとはニヒルな感じで強気な口調をしていたな」
レイヴァンの言葉に何かを思い出したのか、マリアンは突然笑みを浮かべた。
「ニヒルという言葉で思い出すなんてご本人には大変失礼なのですが、それはきっとアンディ様です。 ここの騎士団を束ねていらっしゃる方ですから、ゼノ司祭にお会いしていても不思議ではないと思います」
「そうか……」
レイヴァンは少し考えた後ゆっくりと立ち上がると、左手をすっとマリアンに差し伸べた。
「もう少し話をしたかったんだが」
彼女は照れくさそうにレイヴァンの手を取って立ち上がる。
「どうかされたんですか?」
「ちょっと行きたい所ができたんでね」
そういうとレイヴァンは短い言葉で挨拶を告げ、その場を後にした。
マリアンとの会話を終えた彼が最初に向かったのは先ほどの建物だった。
アンディという騎士に止められて入ることができなかったが、その建物にはゼノ司祭がいるらしい。
この修道院の長として病気であろうが一度は会って話を聞いておきたいとレイヴァンは考えていた。
建物に辿り着いたレイヴァンは扉を押し開けようとしたが、内側から鍵がかかっているらしく開くことができなかった。
中に入れないと解るとレイヴァンは諦めてその場を後にした。
続いて向かった先は騎士団の詰め所だった。
中の様子を伺いながら騎士団を束ねているというアンディを捜した。
しかし、辺りを見渡してもそれらしい男を見つけることはできなかった。
警備に当たっている騎士たちに近づいて彼の居場所について尋ねたが、誰一人として行き先を知っている者は居なかった。




