~ 23 ~
「まさか、あんたは治癒術が使えるのか?」
マリアンが一人になったところを見計らってレイヴァンは声をかけた。
突然の訪問に、彼女は驚いて言葉を上げる。
「レイヴァンさん!」
「呼び捨てで構わないって言っただろ」
「そうでしたね、ごめんなさい」
「それで、どうなんだ?」
自分が知る限り治癒術が使える人間はミレーニア一人だけだった。
質問に対して彼女は静かに首を縦に振った。
レイヴァンは腕を伸ばし前方に見える少し開けた芝生の庭と大きな木を指差した。
「あそこで、少し話をしないか? いろいろと聞きたいことがある」
「はい、喜んで!」
レイヴァンが腰を下ろして木に寄りかかると、マリアンはその側に腰を下ろした。
彼はしばらく何かを考えた後、ゆっくりと口を開く。
「昨夜出逢ったばかりなのに、こんなことを聞くのはどうかと思うが、あんたはいったい何者なんだ?」
レイヴァンの質問に彼女はきょとんとした表情を見せた。
不思議そうな顔をしていたが、直ぐに笑顔で答える。
「私の名はマリアン。 光の女神ミカエリス様に仕える修道女です」
「ここは長いのか?」
「私の出身はこの修道院でしょうか。 物心ついた時から今の孤児院で生活をしていました」
「そうか……」
残念そうな様子を見せる彼にマリアンが心配そうに声を掛けた。
「レイヴァンは、何かを探しているのですか?」
「探している……か」
「でも、どちらかというと何かを思い出して悲しんでいるような。 私が力になれることがあれば、何でも言ってくださいね?」
「そうだな」
レイヴァンはすぐに彼女との視線を外した。
マリアンに見つめられると過去に愛した女性と重なって見えるだけではなく、その澄んだ瞳で全てを見透かされ自然と言葉を紡いでしまうような気がしたのだ。
「この話題は終わりだ」
「はい」
レイヴァンは自分の話題を半ば強引に終わらせると、続いて修道院について質問を始めた。




