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辺りを見渡しながらしばらく歩くと、建物の前で多くの子供たちが遊んでいる場所にたどり着いた。
近づこうとすると男の子供が泣き叫んでいる。
どうやら、走っていて転んだらしい。
すぐに修道女が駆けつけて子供を慰め始める。
彼女がマリアンだと気づくのに時間はかからなかった。
やはりミレーニアに似ている。
似ているどころか、生き写しの域だ。
もしかしたら彼女の生まれ変わりなのか?
レイヴァンは立ち止まり二人のやり取りを見つめた。
「ほらほら、もう泣かないの。 リックは男の子でしょ?」
「そ、そんなこと言ったって、痛いんだもん!」
子供は涙を流して、えずきながらマリアンに抱きついた。
「お姉ちゃん、この前みたいにおまじないで治してよ!」
彼女は子供に笑顔を見せると優しく言葉を返す。
「それはダメ、今回は我慢しなさい」
「えぇ〜!? なんで? この前は治してくれたじゃん!! こんなに血が出て、すっごく痛いんだよ!」
「この前の傷に比べたら、こんなのへっちゃらでしょう?」
「へっちゃらじゃないもん!」
駄々をこねる子供に彼女は常に優しく話し掛けた。
「あのね、リック。 私はリックにおまじないがあればすぐに怪我が治ると思って欲しくないの。 怪我が簡単に治ったりしたら、リックは私に治してもらえば良いと思ってまた安易に怪我をするでしょう。 でも、怪我をするとどうなるか、それをしっかりと覚えて欲しいの。 怪我をすると痛いよね? 上手に歩けなくなるよね?」
子供は静かに頷いて話を聞いている。
「そしたら怪我は怖いって思えるよね? リックはこれから怪我をしないように気をつけて遊べるようになるよね? だから今回は怪我を治さないの」
「わ、解ったよ、マリアンお姉ちゃん…… 僕、我慢する」
「偉いわ、リック」
「じゃぁ、お薬塗ってくる! お薬ならいいよね?」
「お薬は良いわよ」
彼女が満面の笑みで頭を優しく撫で涙をそっと拭ってあげると、子供は元気に建物の中へと入っていった。




