~ 21 ~
レイヴァンは一人になると昨夜出逢った修道女のマリアンを探し始めたが、院内は広くいくら探しても見つけることができなかった。
時折すれ違う修道士たちに尋ねようとしても他人との接触を避けたいのか逃げるように去っていく。
どうしようもない場所だとため息を漏らし彷徨い歩いていると、突然不思議な気配を感じ取った。
それは今までとは違う何か。
周囲を探りながら小走りで辿り着いた先には大きな建物があった。
何の建物かと近くにあった扉に手を伸ばすと、わずかに早く自然と扉が開く。
中からは自分と同じ背丈の男が出て来た。
青を基調とした服に軽量の鎧を身にまとって帯剣している。
……ここの守護騎士か。
「ここには何がある?」
問い掛けると相手も見慣れぬ存在に気が付いたようだ。
途端に表情が険しくなり「ここは立ち入り禁止だ!」と声を荒げられ、同時に肩を押され入り口から遠ざけられた。
「悪いな。 ここの人間ではないから諸事情には疎いんだ」
相手の態度に少々腹を立てたレイヴァンも鋭く睨み返す。
「そうか、キサマが雇われたレイヴァンとかいう奴だな?」
「雇われた? まぁ、そんなものだな」
「キサマも殺される前に、ここから出て行った方が身のためだぞ?」
騎士は一瞬不敵な笑みを浮かべて睨み続ける。
「こんなところで殺されるつもりはないが、忠告だけは聞いておこう」
レイヴァンは不敵な笑みを返すと早々と騎士に背を向けた。
「この私を嘲笑するとは許さぬぞ!」
「それはお互い様だろう? 後は勝手に吠えていてくれ、俺は行きたいところがある」
「ふざけた真似を!」
「ここの騎士は剣を持たない人間を背後から斬りつけるのか?」
レイヴァンは振り返ることなく応えると舌打ちする騎士の下を離れ再び孤児院を目指して歩き出した。




