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レイヴァンの叫び声でリルは目を覚ました。
顔を腕で何度か擦ると背筋を伸ばし大きな欠伸をする。
「もう朝ですか、ご主人様……」
伸びをして目を覚ましたかに見えた彼女だったが、眠け眼でレイヴァンに抱きつくと再び眠りについた。
彼女が目を覚ましたのは、それから一時間ほど経ってからだった。
三人は用意してもらった食事を食べ終えると早速外へ出て院内の探索を始めたが、三十分も経たない内にブライトが叫び声をあげた。
「もう駄目だ! この静かな雰囲気、耐えられん! 悪いけど、俺は一旦街に戻って今回の事件を調べることにする!」
「そう言って、街で遊ぶつもりか?」
レイヴァンは彼の真意を見透かして微笑すると、本人は気まずそうに目を逸らした。
「仕方がない奴だ。 戻ってきた時に報告は怠るなよ?」
「おう! 流石はレイヴァン! そうこなくっちゃ!」
そう言い残すとブライトは一目散に街を目指して駆け出した。
まるで逃げ去るように走っていく彼を見送っていると、今度はリルがレイヴァンに話しかける。
「ご主人様」
「どうした、お前も街に行きたそうだな」
「一緒に行きませんか?」
「断る」
「あう……」
「遊びに行きたいのなら一人で行くことだ」
「ご主人様はここで何をするんですか? 退屈じゃないんですか?」
「……俺たちの目的を忘れてないだろうな?」
レイヴァンの問いかけに彼女は首を傾げて考え込み、はっとすると直ぐに言葉を詰まらせ気まずそうな表情を浮かべる。
「お前……。 まあ良い。 それなら、街に行くついでに精霊石や道具をきっちりと補充してきてもらおうか?」
「わかったです! 早速買いに行って来るです! 暗くなる前には、ちゃんと帰ってくるです!」
主人からの許しを得てリルは笑顔を見せた。
そしてすぐに街を目指して走っていった。
「どちらかと言えば、街の方が安全だろうしな」
レイヴァンはその姿を見送りながら静かに呟いた。




