~ 18 ~
「私は、マリアンと申します。 光の女神ミカエリス様に仕える修道女でございます」
マリアンと名乗る修道女は、胸の前で手を握り合わせて丁寧に自己紹介すると、優しい笑顔を浮かべて深く頭を下げた。
「オールトの街をどうかお救い下さい、レイヴァン様」
レイヴァンは、突然マリアンに背を向けると聖堂の外に向かって歩きだした。
驚くほど動揺して彼女を見続けることができなかったのだ。
「もう、お休みになられるのですか? よろしければ、レイヴァン様のお話を聞かせて頂きたかったのですが」
マリアンの呼びかけにレイヴァンは静かに立ち止まった。
「マリアンだったな」
「はい」
「そんなに畏まった口調で話す必要はない。 むしろ俺のことは呼び捨てで十分だ」
「で、ですが……」
「俺は手を合わせて祈られるほど大した人間ではないんだ」
「そ、そこまでおっしゃるのでしたら、そう致します。 ……えっと、その」
彼女は少し申し訳なさそうに、そして少し照れながら続ける。
「おやすみなさい、レイヴァン。 また明日にでも話を聞かせてくださいね?」
「上出来だ」
レイヴァンは小さく頷くと、そのまま静かに聖堂を後にした。