16/74
~ 15 ~
暗い部屋の中で語気を強めた低い声が響く。
「アンシティフよ、まだ見つからぬのか!」
「も、申し訳ございません」
「我々にとって大きな災いが、すぐそこまで来ているのだ! それなのに貴様は悠長に何をしているのか!」
「アスモダイ様ともあろうお方がそれほどまでに気にかける災いとは一体……」
「言わずもがな、天使ミカエルの剣を持つ人間よ。 封印が残る今、あの剣に斬られたら最期、我々悪魔は二度と蘇れぬのだ」
アスモダイの鬼気迫る表情に、床に片膝をつけるアンシティフは息を飲んだ。
「だが、封印を解けば話は別だ。 ルシファー様が蘇り完全な魔力を取り戻すことができれば我々悪魔は永遠に不滅の存在となる」
「それは喜ばしいことです」
「だから解るな? 少々なら手荒な真似をしても構わぬ! すぐに最後の楔を見つけだし、解き放つのだ!」
「仰せの通りに」
深く頭を下げたアンシティフはそのまま闇に紛れて姿を消した。