~ 11 ~
途中でギルドを見つけると、リルが駆け込んで精霊石を金貨に換えてきた。
今回の移動は大した悪魔に遭遇しなかったことや期間が短かったので彼女が望んだ額には届かなかったが、それでも小遣いとしては十分過ぎる金額になった。
リルはその金貨を持って、あちこちの露店に立ち寄っては、食指を余すところなく振るった。
その途中、大通りから一本中へと入った細い路地を覗き見たリルだったが、すぐに血相を変えてレイヴァンの下に戻ってきた。
「ご、ご主人様!」
「どうした?」
「ひ、人が死んでるです!」
リルの一声に三人は顔を見合わせると、直ぐにその現場へと向かった。
駆けつけた場所には既に大勢の人が集まっていて人垣ができていた。
野次馬たちを掻き分けて前に出ると、若い女性が道端に倒れている。
息をしていないのが一目で解った。
「朝っぱらから、とんでもないもん見ちまったな」
ブライトは呟くとその場に立ち尽くしたが、レイヴァンは表情を変えることなく無言のまま二度と動くことの無い女性に近づいた。
「兄ちゃん、呪われても知らねぇぜ?」
彼が腰を下ろしたところで背後の誰かから声をかけられたが、気にすることなく遺体を調べ始める。
見れば女性は若く服装も艶やかで、見たところ遊女か娼婦に見えた。
腹部に見える傷は刃物傷と見て良さそうだ。
大きな街の中心地で、どれくらいここに放置されていたのだろうか。
レイヴァンが考えている間に、エリィの姿が見えなくなっていた。
「リル、あいつはどうした?」
レイヴァンは立ち上がって、辺りを見渡す。
「エリィさんなら、死体を見た途端に慌てて走って行っちゃったです!」
「清楚なエリィちゃんのことだ、朝っぱらからグロい死体を見せられて気分が悪くなったんじゃねぇか? とっとと修道院に向かって走っていったぜ?」
「そうか、なら俺たちも行こう」
「ここはどうするんだ?」
「自治団にでも任せておけば良いさ」
エリィの様子からして昨晩の酒場と同様に、この女も修道女なのであろう。
レイヴァンは心に何か引っかかるものを感じながらも、群集の輪から抜け出すと再び修道院を目指して歩き出した。