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部屋の扉を開けた時、エリィは窓の前に跪き祈りを捧げていた。
「エリィさん、ご飯食べるです!」
リルは持ってきた食事をテーブルの上に置くと彼女に近づく。
「ありがとう、リルさん」
「エリィさんは毎日お祈りするんですね。 この前、食事を運んだときも祈っていたです」
「私たちは朝昼晩とお祈りをするのよ」
「お祈りって、しゃべらないで誰かにお願いすることですよね? 昔、ブライトに聞いたらそう教えてもらったです。 エリィさんは誰に何をお願いしているんですか?」
「それは光の女神でいらっしゃるミカエリス様に、街に平和が戻りますようにって、お祈りしていたのよ」
「ミカエリス?」
「いつも私達を守って下さる女神様なの」
「リルはそういうのさっぱり解らないです」
「リルさんも、誰かに何かをお願いしたりするでしょう?」
「リルはいつもご主人様にお願いするです! ご主人様は口に出さないけど、リルが困ったら絶対に助けてくれるです! エリィさんも、この前ご主人様にお願いしたから絶対に助けてもらえますよ!」
「そうね」
自分の仲間たちが道を外していく現実を目の当たりにして落ち込んでいたエリィだったが、リルの無邪気な笑顔を見ると自然と笑みがこぼれた。
「それじゃ、リルも下でご飯食べてくるです! エリィさんも食べてくださいです!」
リルはそういうと部屋を後にして、一階へと下りていった。
翌朝、降り続いた雨は上がり青空が戻っていた。
レイヴァンたちは朝食を取るとすぐに街の北部にあるルーヴィエ修道院を目指して出発した。
酒場を出て整備された路を歩き続け、途中で十字路を左に曲がると修道院が真正面に見える大通りへと辿り着く。
通りの両側に並ぶ数々の店にリルとブライトは目移りしたが、レイヴァンは修道院に向かって歩き続けた。
近づくにつれ修道院の大きさは迫力を増す。
一国の城と言っても過言では無かった。