~ 9 ~
翌日、レイヴァンたちは朝霧が立ち込める早朝に出立すると丸一日歩き続けた。
その日は夕暮れ時に見つけた小さな集落の宿で一夜を明かし、翌日もひたすら歩き続けると、日が天頂に昇る頃にようやくオールトの全貌を臨めることができる丘へと辿り着いた。
平野一面には家々が規律良く立ち並び、遥か先に見える海岸まで続いている。
街全体を見渡していると中心地からやや北よりの場所に一際大きな建物が見えた。
その大きさから一国の城とも思えるが、その建物こそ目指していたルーヴィエ修道院であった。
彼らはそれぞれに感嘆の言葉を漏らし丘の上からルーヴィエ修道院を眺めていたが、それまで広がっていた青空に厚い雲が覆い始めると足早に街を目指した。
時間が経つにつれ雲は一層厚くなっていった。
広がった雲が完全に空を覆い尽くすと、すぐに雨が降り始める。
激しく降る雨と分厚い雲に太陽の光は遮られ辺りは夜のように暗くなった。
レイヴァンたちは街に入る手前で雨に打たれたため街に入って一番最初に目に付いた酒場へと駆け込んだ。
その夜、彼らが食事を取るために一階の酒場へと下りると、そこにはしばらく目にしていなかった若い男女で溢れていた。
とくにブライトには若い女性しか視界に入っていなかったようで、あっという間に若い遊女たちを自分の周りに集めると豪快に宴を始めた。
レイヴァンたちは騒がしいブライトを避け彼から少し離れたテーブルで食事を始めようとしたが、エリィはそそくさと席を立ち二階へ戻っていってしまう。
「エリィさん、どうしちゃったんでしょうねぇ?」
「さあな」
素っ気無く返事をしたレイヴァンだったが、彼女が席を立った理由は何となく解っていた。
ブライトの集めた女性の中に修道女が居たのだ。
「修道女ってのは世話がかかる。 リル、今日も食事を届けてやれ」
「わかったです!」
リルは運ばれてきた食事の一部を皿に取り分けると二階へと駆け上がった。