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くじ屋  作者: 柊 蝶茄
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マスク

どうして神様は私をこんなにも苦しめるの?



つっぱった狐のような目。



分厚いたらこ唇。



吹き出物で荒れ果てた肌。



太い骨格に低い豚鼻。



そのせいで何十年と差別され続けてきた。



「気持ち悪い、ブス、お化け、妖怪」



変わりたい、そう何度も思って整形をすることを決心した。



けれど私に整形をするなと言わんばかりに悪魔が襲いかかる。



父がリストラにあい、家計は苦しくなっていった。



バイトで少しずつ溜めていたお金は全てこれからの生活費に回してしまった。



私は一生この顔で人生を歩まなくてはいけない。



恋をしたい。



手をつないで、抱き合って、子供を産んで。



そんなささいな夢さえも叶うことはない。



結婚してもおかしくない歳だけれど、こんな不細工な私を



嫁にもらってくれる男もいない。



元々根暗な私は、未来のことを考えると更に落ち込んでしまう。



そんな時、一枚の広告を見つけた。



そう、今日はこの町一番のイベント花火大会。



今日くらいは夜空に舞う花を見て心から楽しもう。



濃い目の化粧をし、自分なりのオシャレをしてから外に出る。



自分に自信がないため、前を向いて歩くことができない。



こういう時は早く夜になって欲しいと心から願う。



暗くなれば誰もこの醜い顔を見なくてすむから。



目的地にたどり着き、屋台を見て回る。



その時だった。



誰かの足に躓き、その場に勢いよく転げてしまった。



「大丈夫ですか?」



転げた私を見て、お店の人が声をかける。



「は、はい。お見苦しい姿を見せてしまい申し訳ありません」



その場に素早く立ち上がり、ついた泥を払い除け、お店の人に謝る。



恥ずかしさのあまりに顔がほてり、



早くこの場を立ち去ろうと一歩足を前に出すと



「お姉さん、一度引いてみない?」



と、私を引き止めるかのように店の人が言った。



「な、なにをですか?」



ライトで顔が照らされる中、片手で顔を覆うように話しかける。



「くじだよ。一回300円。どう?」



早くこの場を立ち去りたくて、引きたくもなかったが、



引かないと失礼な気がして財布から500円を取り出しおつりをもらう。



「じゃ、箱から一枚紙を取り出してね」



お店の人に言われるとおりに箱の中から一枚紙を取り出し手渡す。



「ふんふん。3等だね。3等はここから選んでね」



指された箱に移動をし、賞品を選ぶ。



そこに置いてあったのは真っ白なマスクだった。



箱を手に取り文字を読む。



大きく七色で「理想のフェイスが手に入る」と書かれていた。



「それはそのままの意味でね、中の説明書どおりにしていくと、



理想の顔が手に入るってやつだ。」



手にもつ箱に再び目を通し黙り込む。



店の人が言っていることが本当なら私の人生が変わるかもしれない。



これを使えば素敵な人に出会えるかもしれない。



脈を打つ心臓の音が聞こえてくるくらいの大きな音をたた鳴らせ、



期待を胸に抱き、店の人に一言告げた後、鞄の中にそれを詰め込む。



小走りで花火を見る場所を探す。



ここなら花火が見える。



人ごみの中、ラッキーなことに一人分空いている場所を見つけた。



そこにビニールシートをひき、腰をおろし



さっそく鞄の中からさっきの賞品を取り出す。



蓋を開け、中にある説明書と書かれた紙を手に取る。



直径五センチほどの薄っぺらい小さな紙には短い文字でこう書かれていた。




お買い上げ誠に有り難うございます。



取り扱い方は以下の通りになっております



――理想の顔の作り方――



1、マスクを両手で持ち、目を閉じた後、理想の顔を思い浮かべる。



2、3分後目を開け、理想どおりの顔になっているか確認する。



3、最後にマスクをかぶる。




以上です。




単純な説明書に私は半信半疑で、どんな顔がいいか頭に浮かべる。



ぱっちりとした大きな目に高い鼻、



薄っすらとした桃色の唇に、透き通るような白い肌。



しっかりと理想の顔を頭に思い浮かべ箱からマスクを取り出し両手で持つ。



そして説明書どおりに携帯で3分後にタイマーをセットし、



目を閉じ理想の顔を思い浮かべる。



音が鳴る。



携帯が3分たったことを知らせる。



私はスッと目を開けマスクを見てみる。



そこには本当に想像したとおりの顔が出来上がっていた。



「すごい!!本当だったのね!!」



私はマスクを持ったままその場に立ち上がり、マスクを深々と見つめる。



「これが私の顔に・・・?すごく綺麗・・・」



胸の前にあるマスクをもっとちゃんと見るために、



私は徐々に顔にマスクを近づけていく。



首下までマスクを近づけた時だった。



マスクが勝手に私の顔に向かって張り付いた。



慌ててマスクをとろうとしたが、もう遅かったのだった・・・。








突然視界が真っ暗になる。



瞼を閉じているようだ。



私は恐る恐る目を開ける。



私の視界に写ったもの。



それは白く豆腐のようなものに赤い線が走っている。



鉄のような血なまぐさい臭い。




そう、それは自分の内部だった―――。






*注意*



・ 一度理想の顔を作ると作り直すことはできません。



・ あまり表面側のマスクを顔に近づけ過ぎますと、間違えて認識してしまい、



そのまま貴方のフェイスになってしまいますのでご注意下さい。



END

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