暗闇の中
処女作です。
拙い文章だとは思いますが読んでくれると嬉しいです。
暗闇の中少女は静かに
「****」
と呟いた。
その言葉には意味など存在しない。ただ生まれては消えていく多数の言葉のように静かに消える言葉の一つとして生まれてきた。そして次の瞬間、誰かに音も情報も伝えることなく言葉は消え、少女は小さく溜息をついた。
少女は周りの状況を判断しようと目をこらした。しかし目に映るのはどこまでも続く闇だけ。では何かあるのかと周りの闇に手を伸ばした。しかし何もつかめず何の情報も得ることはできなかった。
今どうしてここにいるのだろうと少女は考えた。しかし何も分からない。気が付いたらここにいたのだ。眠っていたわけでは無い。しっかり一部始終を見ていた。だけども何も覚えていない。考えてみれば自分という存在は確かにここにいる事は理解できるが、自分がどこの誰なのかも分からない。ただ私は日本が話せる。さっき誰でもいいから自分という存在に気づいてほしくて言葉を発したときにでた言語は日本語だったから。この状況で自然と出る言葉が日本語だから少女は日本人なのかもと憶測の範囲で考えた。ふくらみかけた胸や、肉のつきかた、なぜか着ているワンピース、そして感覚で自分は少女なんだろうと思った。
何の匂いもせず、何も感じることのできない空間でずっと張っていた集中力がきれた途端にいきなり睡魔が襲ってきた。でも睡魔なんかに負けることはできない。何の情報が無いからこそ突然何かが襲ってくる可能性もあり得る。
どれくらい時がたっただろう。とても長い時間ここに座っていたと思う。しかしそれはあくまでも推測で数分かもしれないし逆に数十時間なのかもしれない。体内時計は壊れていて時間の把握が全くできない。ただ分かるのはとっくの昔に睡魔は去っているということだけ。
突然光が差し込んだ。誰か来るのかと身構えたが何も起こらない。ふと冷静になり光が入ることによって見ることのできた周りの様子を観察してみた。見たところ白い正方形の建物にいるみたいだった。そして足元と天井についている窓から光が入ったようだ。
よく見ないと分からないが少女が一人ぎりぎり入ることのできるであろうドアが部屋の片隅についている。おそるおそるドアに近づいてみるとちょうど少女の体の大きさにあったドアだった。まるで少女のために作られたみたいだ。
しばらく考えたがドアを開け外に出ることにした。ここにいても何も分からない。
扉の向うには信じられない光景が広がっていた。それは瓦礫の山だった。その山を見ているとこの景色に見覚えがあることに気が付いた。確かに自分はこの地域に住んでいたのと直感的に分かった。それが引き金になって様々なことをおもい出し た。推測の域で考えたように日本人で自分が某進学校の一年生であること、そして周りの人からは樹利亜と呼ばれている存在。それが自分なんだと少女、いや樹利亜は実感した。
次の瞬間、昨夜過ごした建物がすっと消えた。なぜだかは分からない。しかし何故こんな状況になっているのか着た覚えもなければ買った覚えもないこのワンピースを着ているのはなぜか、普通夜から朝に変わるときは徐々に変わるはずだがなぜスイッチを付けたときのようにいきなり明るくなったのか、昨夜星や月が一切無かったのも今太陽や雲が無いのもおかしい。むしろなぜこんな非常事態に自分は落ち着いていられるのかそして家族や近所の人同級生はどこに行ったのか、どうして自分だけがここに存在しているのか樹利亜には分からない。疑問の海に沈んでいく感覚を味わった。