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000 イントロダクション

 

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イントロダクション

 +++

 

 

 子供の頃。俺はずっと妖怪に囲まれて暮らしていた。そう思っていた。

 

 自分以外はみんな化物だった。だってみんなが俺の心を読めるのだから。

 

 みんなが俺のことを知っている。だけど、俺はみんなのことを知らない。

 

 親も双子の妹も、友達の心だって俺は知ることができないから。


 怖かった。みんなが俺を除いてわかりあってる気がして。俺一人がひとりぼっちな気がして。

 

 

 そんなはずないのに。

 

 

 けれど。テレビ(むこう)にいるあの子は俺のことなんてまったく知らなかった。ドラマにCM。当時引っ張りだこだった、天才子役と呼ばれた女の子。

 

 だから怖くない。俺はずっとテレビ中のあの子を見ていた。

 

 あの子はいつもかわいくて、キラキラしていた。一生懸命に思いっきり笑って、思いっきり泣いて。

 

 あの頃の俺も今と変わらず演技なんてよくわかっていなかったけど、テレビ(むこう)なんて遠くにいてもあの子が伝えようとしていることはしっかり俺の心に届いた。あの子のドラマを見て俺は泣いたりもした。

 

 羨ましかったんだ。できそこないの俺なんかとは違ってあの子は、演技と台詞で気持ちを、伝えたいことを何の力も使わずに伝えることができるのだから。

 

 憧れてた。ずっと応援していた。それで、あの子が俺のことを知らないことがすごく悲しいと思った。

 

 きっと初めてだったと思う。知られたいんじゃない。自分のことを知ってほしい、誰かに伝えたい。そう思ったのは。

 

 初めて書いたあの子へのファンレター。宛先は姫島紗柚ひめじま・さゆ

 

 あの時書いた手紙は、ちゃんとあの子に届いたのだろうか? 高校生になった今でもそれはわからない。

 

 

 そんな俺がまた手紙を書いている。

 

 今の俺の気持ちを誰にもサトラレたくなくて、だけど伝えたくて書き留めた彼女へのラブレター。

 

 宛先は――



 好きです。


 俺はただ、彼女にそう伝えたい。

 

 +++

 

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