表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛しき人はコドクより蘇り  作者: 五槍暴君
第1部『ヴァイアル編』
9/18

第2話part4

話は戻りーー


正午過ぎ 海鮮丼屋

「へい、鉄火丼大盛納豆オクラ生卵トッピング2丁、お待ち!」

カウンター席に座る侠弐とリサの前に、丼がそれぞれ置かれた。

赤く光沢のある鮪の切身が白飯の上を覆い尽くし、その上にオクラと納豆が被さっている。

そして中央に空いた空洞を、新鮮な卵黄が我が物顔で占拠していた。

「これ、これだよ」

上機嫌に、うんうんと頷く侠弐。

「……」

口内で満杯になった唾液を飲み込み、丼を凝視するリサ。

「それじゃ、食べようか」

コクリ。

「「いただきます」」

醤油をかけ、卵を割り、納豆とオクラと混ぜ合わせ、それを鮪と白飯と一緒に頬張る。

咀嚼すればする程、彼らの口内を美味さが駆け巡る。

侠弍は勿論のこと、リサも目を丸くして食べる食べる。

2人共、ものの10分もしない内に完食してしまった。

「「ご馳走様でした」」


「美味かったな」

「うん」

昼食を堪能した侠弍とリサ。

店を出た後、少し歩いた先のベンチに腰掛ける事に。

端に、リサの着ていた服や他の購入品が入った紙袋を置き、その隣に2人は座る。

「ふぅ……結構買い物したな」

「……」

ふと、侠弍が隣を見ると、リサは空洞が出来るような形で両掌を軽く合わせ、その中を見つめていた。

「?」

「……出来た」

そう呟き、彼女は両掌を開き、お椀の形にする。

そこには、小鳥を模した銀色に輝く金工品があった。

リサは上体を侠弍の方へ向き、掌を彼に差し出す。

「こ、これ、プレゼント、私から」

「え?あ、あぁ、ありがとう」

いきなりの事で戸惑いつつも、侠弍はそれを受け取る。

「懐かしいな。昔もこうやって作って、プレゼントしてくれたよな」

「部屋に、渡したの、置いてあったから」

「あぁ。貰ったものは全部飾ってある。否……一つだけ違うな」

侠弍は左袖を捲り、手首に嵌った腕輪をリサに見せる。

「これだけはずっと身につけてる。あの日から、ずっと」

「私も」

リサも同じように袖を捲って、侠弍に見せる。

「これだけは、何が起きても変形させなかった。したらもう、戻せない気がしたから」

「1度変えたら、形は固定されるのか?」

「ううん、再変形はできる。気持ちの問題」

「気持ちの問題か……何となくわかる」

消耗品に等しい武具ならまだしも、思い出の品の形を変えてしまうのには抵抗があるのだろう。

侠弐は、金工品をポケットに入れながら、そう考えた。

「そういえば、作った武器って消したりできるのか?」

「できる。それを利用して、敵を倒すこともある」

「……どんな敵がいたんだ?」

「……」

「あぁいや、言いたくなかったら良いんだ。ごめん」

「……色んなのがいた。素手、武器持ち、特殊能力持ち。武器は刃物や銃火器や光学兵器、能力なら精神汚染や時間を止めて来たり、後はイン……インガリ……」

「因果律操作?」

「そうそれ、ありがと」

リサは、話を続ける。

「戦闘方法も正面から挑んで来たり絡め手使ったり。でも、彼ら彼女らの殆どに共通している事が、1つあった」

「……それは?」

「……戦いを望んでない事」

「!」

「戦闘狂なんてほんの僅かだった。皆、戦う時辛そうな、苦しそうな顔してた。時折耳を塞ぎながら」

「耳を……ヴァイアルか」

リサは頷く。

「本体は、見た事ない。でも、頭の中に声だけが響いて来た。精神に作用する他のどんな能力より強くて、恐ろしかった」

彼女の体が無意識の内に、小刻みに震える。

「鼓膜を破いても関係なかった。多分、意識に直接送っていたんだと思う。今でも頭にこびり付いてる。殺せ、殺せ、って それが凄く、凄く怖かった 私が私じゃなくなる感じがして 」

如何に堕天に数えられる程の力を持っていても、彼女は幼い少女。

その恐怖と苦痛は何れだけのものだったかが窺える、と侠弍は思った。

「でも不思議。こっちに戻ってから、声がしなくなった。多分、脱出できたから、だと思う」

「そうか それは、何より、だな」

ぎこちなく言葉を発す侠弍。

「うん。でも、もっと良い事もあった」

リサは、隣にある腕に自身の腕を絡ませ、体をもたれさせる。

其の行為が何を意味するか、侠弍は直ぐに分かった。

彼は絡まれた腕を回し、リサの手を握る。

「……俺も」

互いの冷たさと暖かさが、段々と混じり合っていった。


が、それも長くは続かなかった。


「!」

突如、2人の座るベンチの下が、青白く光り出す。

同時に、地面に灰色の渦が出現する。

「!?」

「な、何!?」

渦は2人を飲み込んでいった。

そして段々消えていき、後には無人のベンチと荷物が残るのみとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ