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愛しき人はコドクより蘇り  作者: 五槍暴君
第1部『ヴァイアル編』
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第2話part3

ピンポーン。

「はーいー」

チャイムが鳴らされ、玄関へと向かう螢。

ドアを開けると、

「やぁ」

そこには渚が微笑みを浮かべて立っていた。

例によって暗緑色の羽織を着て。

「渚さんー!どうして家にー?」

「近くを通ったんで、螢どうしてるだろうなって。上がっていい?」

「勿論―!お茶とお菓子用意するから待っててー!」

螢はすこぶる上機嫌で、中に入っていった。

「お邪魔します」

渚は靴を揃え、通路を通って居間へと入り、ちゃぶ台下の座布団に腰を下ろす。

「お待たせー」

螢はトレーにお茶入りのコップと茶菓子を乗せ、運んで来る。

その表情は、すこぶる上機嫌であった。

「……螢」

しゃがみ込み、トレーをちゃぶ台に下ろした彼女に、渚が声を掛ける。

「最近はどう?また怖い夢見た?」

「ううんー見てないー」

「そうか……それならいいんだ」

そう言って、螢の頭を撫でる渚。

「んふー」

嬉しそうに、満面の笑みを浮かべる螢。

こんな可愛らしい少女の中に、恐ろしい化け物が眠っているとは誰も思わないだろう、と渚は内心思った。

肆天魔が1柱、凶騒ヴェリア。

それが螢に巣くう化け物の名であった。

永遠の破滅を求め続ける、危険極まりない戦闘狂。

ガラゴにとっては痛み分けをした苦い思い出の相手であり、渚にとっては恋人を苦しめる仇敵である。

10ヶ月前、渚は螢と出会った。

その時螢は、精神的に不安定な状態であった。

性格も暗く沈み、いつ壊れてもおかしくなかった。

そこに現れてしまったのがヴェリアである。

ガラゴとの戦いで肉体を十分に保てなくなった彼奴は、螢を依代とし憑依。

彼女の肉体を乗っ取り完全顕現を果たそうとした。

渚とガラゴは、死力を尽くしてそれを阻止。

ヴェリアを、螢の中の奥深くに封印した。

消滅してはおらず、いつ復活するかもわからない為、渚は定期的にあることを行っている。

「螢」

「なーにー?」

「来て直ぐだけど、あれ、やる?」

「やるー」

螢は渚の前に座り、手をついて顔を近づける。

渚はポケットから紐を括り付けた5円玉を取り出し、螢の顔の前に近づけると、そのまま振り子の要領で左右に揺らす。

「螢はー怖い夢をー見なくなーる。螢はー怖い夢を見なくなーる」

催眠術による精神安定。

これが、ヴェリア復活を阻止する現状唯一の方法であった。

彼奴は表に出て来ようとする際、何かしら予兆を見せる。

それが以前螢が言った怖い夢であると、渚は考えていたからだ。

故に催眠術で暗示をかけ、見させないようにしている。

見なければ、ヴェリアの誘惑も意味を為さなくなる筈だ、と。

「螢はー怖い夢をー見なくなーる、螢はー怖い夢をー見なくなーる」

正直言って、この方法が不確定なものであることは、彼女も十分認識していた。

が、対抗策は他になく、効果も一応出ているため、行い続けていた。

現に螢は、術をかけ始めてから不調は和らぎ始め、最近ではすっかり本調子になっていた。

それには、催眠以外の渚の献身的なサポートがあるのは、言うまでもない。

「はーい、おしまい」

渚は、5円玉をポケットにしまう。

「えへへー、渚さーん」

螢は、待ってましたとばかりに渚に抱きつく。

渚は、彼女を優しく抱き留め、頭を撫でる。

「なでなでー」

「んふー」

しばしの間、イチャイチャを堪能する渚と螢。

そんな2人を、天井に止まった一匹の蛾が、じっと見つめていた。


「どう思う?ガラゴ」

螢宅を後にして少しの後、渚は歩きながら尋ねた。

「恋人との仲の進展具合か?」

「それも気になるが、ヴェリアの方」

「探知してみたが、復活の兆しはなさそうだったな。まぁ、用心するに越した事はないが」

「そうか……」

ガラゴは、範囲内のあらゆる事象を見通せる力を持つ。

その精密性は高く、対象の動作、感情、果ては隠された何かまで解ってしまう。

尤も、普段は大雑把に能力を展開し、要所要所で注目するという方式を取っている。

当人曰く、四六時中張り詰めていると不必要なエネルギーを消耗し、いざという時に対応に遅れが生じる、との事である。

「寧ろ、きな臭い動きをしているのは、亜開(ああく)に残った奴の軍団の残党だ」

「……」

渚は、露骨に嫌な顔をする。

亜開家、若しくは亜開一族。

2000年に渡り、獣僕を含む妖魔からこの国を守ってきた対魔の一族である。

渚は以前、一族に潜んでヴェリア復活を企てた者達と戦った事があった。

中心人物は倒し、其の部下達も記憶を消去したものの、未だ懸念材料は存在している。

「もう一遍記憶を消さないといけないのか……」

「否、それはまだ早い」

「どうして」

「お前の叔父が、連中を見張っててくれてる」

それを聞き、渚の握った拳が緩まる。

「……そうか……叔父さんが」

周囲の人間が敵同然であった彼女にとって、叔父は数少ない味方であった。

気弱で争いごとが苦手な性分ではあるが、有事の際にはガッツをみせる一面もある。

先の一件でも、渚は世話になっていた。

「あの人には結構苦労掛けてるからな……今度、ご飯ご馳走しようか」

彼の好物は何だっただろうか、等と考えていた次の瞬間――

「「!!」」

渚は、道路上に立ち止まった。

「……ガラゴ」

「……あぁ」

彼女らの視線の先――道路前方から3体の人影が歩いてくる。

皆、同じトレンチコートを着、同じハットを被っている。

さながら、一昔前のギャング映画に出てきそうな出で立ちである。

奇妙な事に身長や体格、帽子の影になり見えづらいが顔までも、同じ様相を呈している。

そして1人が先頭に、2人がその背後に位置し、二等辺三角形を崩すことなく彼女たちに向かってくる。

一般人でないことは、明らかであった。

ガラゴは素早く、渚の羽織の中に潜り込む。

渚は内心臨戦態勢に入るも、実際に構えることはせずに、相手の出方を待つ。

彼女らの距離は徐々に縮まっていく。

そして、残り約1.5mの地点で、人影は立ち止まった。

「……私に、何か?」

渚は尋ねた。

返事は無かった。

代わりに、彼女の腹めがけて拳が飛んで来た。

がー

「いきなり襲って来るとは、穏やかじゃ無いな」

渚は片手で拳を受け止めると、そのまま腕を持ち上げ、捻り上げる。

「目的と主の名を言いたまえ。さもなくば、この腕があらぬ方向に曲がる事になる」

渚は手に力をこめながら問う。

ギシギシと、骨では無い何かが軋む音が鳴る。

が、顔は無表情を通り越し、ピクリとも動きすらしない。

(こいつら、機械人形か)

すると今度は、応答の代わりに左右の人形達が片腕をまっすぐ伸ばし、彼女に向けてくる。

その手には、半自動式拳銃が握られていた。

「撃ってみたまえよ。殺れるものならね」

渚は口元に笑みを浮かべ、挑発する。

瞬間、周囲に銃声が鳴り響く。

「何処を狙っているんだい?」

声は、人形達の背後から聞こえて来る。

同時に、左右の人形が前方に吹き飛ばされ、地面に倒れ伏す。

煙と火花をあげる背中には、何かが激突したような凹みが出来ている。

残った人形は素早く振り向き、銃の引き金を引くーー寸前、顔面に強烈な一撃を叩きこまれ、仰向けに吹き飛ばされた。

「ふぅ……」

渚は周囲を見まわし、目撃者がいない事を確認する。

「誰にも見られてないし、地面にも目立った跡は出来ていないっと。翁は使わなくて良さそうだな」

次に懐から札を取り出し、人形達に近づける。

後から解放する事も出来る為、持ち運びにも使用できるのだ。

「このままにもして置けないし、持って帰って調査を……そうだ」

渚は、何処かへと電話をかけ始めた。

「あの人なら、何か知ってるかもしれない……」

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