第4話part1
「肆天魔……⁉」
眼前の人物 鴉天誅の言葉に、侠弐は驚き身構える。
「そう怖がらないでくれよ。危害を加える気はないし、それに僕は敵じゃない。ガラゴか渚ちゃんから、聞いてない?」
「……もしかして、先生達の知り合い、ですか?」
「其の反応だと、僕の事教えられてないようだね」
天誅は、少々凹んだ表情をするも、直ぐに元に戻した。
「そう、僕はガラゴの友人で渚ちゃんの 師匠?だから、君から見たら大師匠に当たるのかな?」
「俺の事まで……」
「大体の事は知ってるよ。叢雨侠弐君、17歳。身長179cm。体重60kg代。好物は鉄火」
「ちょっ、ちょっ、ちょっ!」
「ん?どうしたの?」
「ここ外ですよ!?人もいっぱいいるし、絶対白い目で見られ……てない?」
それどころか、人々はまるで彼らが其処にいないかのように、素通りして行く。
「へ なんで 」
「この札の効果凄いねぇ」
天誅の人差し指と中指の間には、一枚の札が挟まれている。
「其れ……どこで……」
「いったでしょ?僕は渚ちゃんの師匠?みたいなものだって」
「…… わかりました。一旦信じましょう。其れで、どうして俺が蠱獄にいたと?」
「さて、何処から話そうかなぁ」
「手短に素早くお願いします。時間がないので」
「わかった。じゃ単刀直入に」
「この景色に見覚えない?」
瞬間、侠弐の眼は暗闇に包まれる。
幸いにも、直ぐに視界は開けた。
が、
「!?」
其処は、自身が数秒前までいた景色とは全く違ったものになっていた。
草木一本ない荒れた大地。
ポツポツと点在する岩山。
フィルターがかかったかのように赤い視界。
赤黒く明るい空。
その空の中、白く光を放つ月、のような巨大な球体。
「ここは、前に夢で見た……そうか、ここが蠱獄……ん?」
不意に当たりが暗くなる。
同時に聞こえて来る数多の唸り声。
侠弐は、上を見た。
そこには、
「キシャアアアアゴ!!!!」
「ルァアアアアア!!!!」
「ブブブブッ、ブブブブッ!」
「キシャン!キシャン!」
岩山の上に、彼が今まで対峙して来た獣僕達が、何十何百とひしめき合っていた。
「あ、 ああああ……」
侠弐は恐怖で身体が動かなくなった。
「て、天誅さん、あれ……あれ……」
「そうだねぇ、いっぱいいるねぇ」
「あれ全部ですか!?」
「あれだって、獣僕全体の1%にも満たないよ」
「む、無理ですよ!1体2体なら兎も角、あの数1度には……」
「君のリサちゃんへの想いは、其の程度なの?」
「 へ?」
「リサちゃんはあれの何十倍もの数を相手に それだけじゃない、自身と同じ境遇の相手とも戦い、倒していった。全ては、生きて君と再び会う為に」
「!」
彼は理解した。
「……烏滸がましいな」
「ん?」
「其処まで強いリサを俺如きが守るなんて、烏滸がましかったなって」
天誅は其れを聞くと、フッと微笑んで人差し指を立てる。
「1つクイズ。守るという事は相手の意思と無関係に庇護する事に繋がる。では、相手の意思を尊重し、対等の関係を築くには?」
「尊重……対等……」
「それじゃ、僕はこれで。頑張ってねー」
そう言うと、天誅はマントを翻し姿を消した。
同時に、獣僕達が侠弐目掛けて襲いかかって来た。
彼は其れを必死に交わし続けながら、答えを見出そうとする。
(尊重……!対等……!)
やがて、岩山の一角に追い詰められてしまった。
恐怖と焦りを押し殺し、思考を止めない侠弐。
(尊重……!対等……!尊重……!対等……!)
「侠弐は私が守る」
「否、俺がリサを守る」
「守るという事は相手の意思と無関係に庇護する事に繋がる」
「!!!!」
侠弐は、結論を導き出した。
瞬間、彼は獣僕達の波に飲み込まれて行った。
其の様子を、天誅は獣僕達が居た岩山の頂上に降り立ち、眺めていた。
「1度は発現した力、危機的状況に陥れば再び……!どうやら成功したようだね」
微笑む彼女の顔には侠弐への祝福と、ある種の狂気さが浮かび上がっていた。




