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愛しき人はコドクより蘇り  作者: 五槍暴君
第1部『ヴァイアル編』
12/18

幕間

ルトアー国北東部、国立第4科学研究所。

稼働を停止した筈の研究所内で、コツ……コツ……と足音を鳴らす、人影が1つ。

人影は、女の姿をしていた。

身長170cm前後の華奢な体躯。

黒スーツの上から黒マントを纏い、学帽型の黒い帽子を被った出で立ち。

端正な顔つきでありながら、どこか狂気さを孕んだ表情。

彼女は、内部を一通り歩き回ると、最奥部へと歩幅を進めた。

中央にゲートが備え付けられていたであろう入り口をくぐり抜け、中へ。

砂嵐も映らなくなったモニター群。

床には、散乱した研究資料の数々。

そして、中心部に残る巨大な爆発痕。

「……」

彼女は、爆発痕を眺めた後、視線を床の研究資料に移し、何枚かを拾い読み始めた。

視線をスライドし、1枚また1枚と読み進めていく。

そして、

「!」

ある文言が目に入った。

ホッチキス止めされたその資料には、こう書かれていた。


未知金属(アンノウンメタル)ディアス10及び、その創造主たる少女型生命体に関する研究。その進展について』


「見―つけた」

彼女は、指をパチンと鳴らす。

瞬間、自身の顔が明るく照らされる。

「誰だ!そこで何をしている!」

明かりの正体は、警備員の持っている懐中電灯のものであった。

彼は足早に、彼女の方へ向かう。

彼女は資料をしまい、両手を軽く上げ、ガタイのいい警備員に向き直る。

「いやー、すみません。実は僕、ここに忘れ物をしてしまいまして、取りに来たんですよー」

「十数年も前に稼働停止したところへか?それにその服装……怪しすぎる」

案の定、警備員は疑いの目を向けてきた。

「ははは……えーと」

まぁ仕方ないか、と思う彼女。

その時だった。

「危ない!」

「うおっ!」

彼女は咄嗟に警備員を押し倒し、自身も折り重なるように倒れる。

瞬間、頭上を銃弾の雨が掠れ、奥の設備が撃ち砕かれる。

「な、なんだぁ!?」

動揺し、体を起こそうとする警備員。

「まだ伏せてて」

それを片手で押さえ込みながら、立ち上がる彼女。

その視線の先にある入り口付近に、大勢の機械人形の姿があった。

皆一様に、穴の開いた10指の先を彼女に向ける。

そして、穴から火が噴き、数多の弾丸が標的に突撃して行く。

巨大な炸裂音が部屋の壁にぶつかり、四方八方に木霊する。

どれくらい時間が経っただろうか。

音が止み、静けさが段々と戻って行く。

が、警備員は恐怖のあまり耳を塞ぎ、其の事に気付かないでいた。

そんな彼の肩がポンポンと叩かれる。

「!」

「もう終わったよ」

彼女であった。

「お、終わったって……」

「ほら」

彼女が指差す先を警備員は恐る恐る見る。

「!?」

其処には、積み重なるようにして床に倒れ伏した機械人形達の姿があった。

「こ、これ、あんたが……?」

「そだよー」

戯けた様子で答える彼女。

「信じられない……」

警備員は、驚いた表情で彼女を見つめる。

「しかし、オルテウスの兵隊がこんな所にいたなんて……」

彼女は小声で呟く。

「へ?オル?」

「いや、こっちの話。あ、そうだ、これ貰っていって良い?」

「何だ、其の書類?」

「知らないの?」

「俺は日替わりで此処を警備している内の1人だ。残存物にはなるべく触るなと言われてるから、何も知らん」

「そう……」

「というかあんた、俺がいなくても持ってく気だっただろう」

「御名答、と言いたいところだけど半分不正解だね」

「内訳は?」

「持ってく気だったのは正解。けど、この紙自体はいらない。情報さえ手に入れば良いからね」

そう言って、彼女は人差し指を立て、こめかみに当てる。

「それじゃ、僕はこれで」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

警備員が呼び止める。

「1つ聞いておきたいんだが……あんた、何者なんだ?」

「僕かい?」

彼女は振り返ると、人差し指を立て、口元に持って行った。

「……なーいしょ」


どこかの都市の、どこかの高層ビル。

その屋上に、彼女はいた。

「さて、後はこの資料を届けるだけだね」

そう言って、懐をポンと軽く叩く。

「渚ちゃんとガラゴ、元気にしてるかな」

彼女は目を閉じ、両手を広げ、風と喧騒をその身に浴びた。

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