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愛しき人はコドクより蘇り  作者: 五槍暴君
第1部『ヴァイアル編』
10/18

第2話part5

同時刻

「お掛けになった電話は、電源が入っていないか電波の届かない」

自動音声が切れるのを待たず、渚は通信を切断した。

「駄目だ、出ない。あの人なら、知っていると思って掛けたが……」

「相変わらず、行方不明か」

ガラゴは彼女の肩に乗り、喋りかける。

「仕方ない、これは私らだけで調べよう」

そう言って、渚は片手に持った人形入りの札をポケットにしまう。

「そうだな……ん?」

「どうした?」

「……叢雨達が消えた」

「!……どういう事?」

「この消され方……まさか」


「痛っ!」

勢いよく尻餅をつく侠弍。

「痛つつ……ここは……」

彼の視界は、数秒前と一変していた。

人々が行き交う街並みは消え、代わりに暗くだだっ広い空間が、そこには在った。

この謎の空間で、彼が知るものは己自身、そして

「……」

側で武器を構えて立つリサのみであった。

その顔は、イドラと相対していた時と同じく、冷たさと力強さが入り混じる。。

手には鍔無し刀が握られ、臨戦態勢を取っている。

(リサが身構えている 敵がすぐそこにいるという事か )

侠弍も咄嗟に、ポケットへ手を突っ込み、札を取り出す。

(解)

そして出現させた手槍を握り、視線を四方に向ける。

(どこだ……どこにいる)

ゾクリとする気配、殺気が2人を襲う。

彼らは瞬時にそれが発せられた方へ、体を向ける。

そこには、直径約2mの渦が縦向きに展開されていた。

「侠弍」

構えたまま、リサは言葉を発す。

「ど、どうした?」

「少し、隠れてて」

「へ?」

瞬間、彼の足元から銀色の流動体が、円を描く様に出現。

隙間無く噴水の様に上昇し一点で集約、そのまま固まり、彼を中に閉じ込めてしまった。

「な!?お、おいリサ!」

侠弍は突然の事に動揺、内側から強く叩き、リサに呼びかける。

「開けてくれ!開けてくれリサ!開けてく」

「侠弍、静かに」

「……!」

彼は、思わず口を閉じた。

その言葉には有無を言わせないものがあったからだ。

「大丈夫、そんなにかからないから……多分」

リサはそう言うと、正面をジッと見据える。

瞬間、渦から何者かが出現した。

長身の男であった。

身長180cmを超えるガッチリとした体躯をシャツとズボン、前開きの黒色のジャケットで包んでいる。

角刈りとオールバックを混ぜ合わせた様な髪型に、笑みを浮かべた厳つい顔面。

サングラス越しに覗かせる眼光は迫力があり、睨みを効かせれば、小さな子供なら泣き出しかねない様相である。

「さっきの視線、お前?」

リサが問う。

「正解。よく気づいたな」

「目的は何?戦いならできればしたくない……けど……するなら容赦しない」

「まぁそう警戒しないでくれ。俺は戦うためにお前らを招いたわけじゃない、 ところで、もう1人いる筈なんだが……もしかして、その蟻塚みたいなのがか?」

「!」

「その表情、図星のようだな。だが今言ったように、お前らを招いたのは戦う為ではない。故に、危害を加える気もない」

「……」

「信じられないなら、それでもいいさ。その場合は……」

男は、懐に手を入れる。

「少し眠っててもらおう」

瞬間――

ズドン!!

リサの背後で、銃声が鳴った。

彼女は振り向きこそしなかったものの、顔には動揺が現れている。

その後頭部から、僅か数㎝の位置に浮かんだ銀色の物体が、弾丸を包み込んで被弾を阻止していた。

「ヒュー、自動防衛機能も備わっているとはな」

男は口笛を吹き、懐から手を取り出す。

その中には、銃口から煙を上げる自動拳銃が握られていた。

「尤も、あの世界で生き残るには、それぐらいは持ってないとな」

リサは、男を睨む。

「あの世界……お前も……」

「その通り。おっと自己紹介がまだだったな」

サングラスの反射が解け、その向こう側の眼が透ける。

「俺はゼレイム」

男――ゼレイムはそう言うと、口角を吊り上げた。

リサは刀を構え、ゼレイムを睨みつける。

「なんだ、危害を加える気はない、と嘘をつかれたのがそんなに腹立ったのか?」

「否、あの程度のブラフは日常茶飯事だったから、安易に予想できた」

「じゃあ、なぜ睨む?」

「……お前、強い」

「……どうやら、力量を計る目もしっかりあるようだ、な!」

ゼレイムは、天高く右腕を真っ直ぐ掲げる。

瞬間、

「!」

リサの頭上に何本もの槍が出現、彼女に降り注いで来た。

(バリア)!」

彼女は咄嗟に、銀色の屋根を空中に展開、防ぐ。

が、其の眼前に無数の銃口が現れ、けたたましい発射音を立てながら火を吹いた。

リサの身体は硝煙に覆われ見えなくなった。

ゼレイムは其の様子を、笑みを浮かべながらジッと見ている。

「これで終わりではないだろう?」

彼が言葉を放った次の瞬間である。

銃火器は瞬時に切り刻まれ、スクラップと化す。

同時に煙の中から銀色の鎧を纏ったリサが出現、恐るべき速さでゼレイムに迫り駆ける。

「そう来なくては!」

彼はニッと笑い、手にした拳銃を迫り来る標的に向かって撃つ、撃つ、撃つ。

が、リサは走り方をジグザグに変え、弾丸を瞬時に避けて行く。

「動体視力に反射神経も申し分ないな」

彼がそう呟いた次の瞬間には、眼前にリサが迫っていた。

彼女は飛び掛かり、ゼレイムを袈裟斬りにした、

「!?」

かに見えた。

「が、相手の能力を調べ切らずに直接攻撃を加えるのは、少々マイナスだな」

ゼレイムの肩から胴体、即ちリサが斬り込んだ箇所に楕円形の渦が現れ、彼女の刀を飲み込んでいた。

刀は微動だにせず、斬り裂く事も引き抜く事も不可能であった。

が、ここで形成逆転させる程、リサは甘くない。

自身とゼレイムの間に鋭利な槍先を創出、回転させ標的に放つ。

「無駄だ」

そうゼレイムが言う。

瞬間、

「っ!?」

リサの腹部に衝撃が走り、彼女は数メートル後方に吹き飛んだ。

直様体勢を立て直すリサ。

が、抑えた銀色の腹には、同じように銀色の槍先の跡がはっきり残っていた。

確実に相手を仕留める気で放ったものである。

着弾の瞬間による形態解除と自動防衛機能により致命傷は免れたものの、其のダメージは決して小さいものではない。

「どうした?手詰まりか?」

肘を曲げ、両手を斜め上に伸ばし、ゼレイムは挑発する。

其れに乗る程、リサは愚かではない。

が、相手の言う事も間違いではなかった。

槍弾(スピアブレット)を始めとする物量攻撃は、空間転移によって攻撃を跳ね返せるゼレイムとは相性が非常に悪い。

しかし、接近戦に持ち込んでもダメージを与えるのが困難なのは、先程の斬り込みから明らかである。

リサの表情に、僅かながら焦りが出始めた。

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