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愛しき人はコドクより蘇り  作者: 五槍暴君
第1部『ヴァイアル編』
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第0話

少年は、力や強さと無縁の日々を送りたかった。

何かを得ようとするのに力を欲すれば、必ず争いが起こる。

ならば、何かを欲しようとしなければよい。

そう考えていたからだ。

ボロ小屋で想い人と平穏に戯れる、この慎ましくも幸せな日々。

それさえあれば、何も求めなかった。


が、少年はまだ気づいていなかった。

その現状の幸せを維持することにも、一定以上の強さが必要であることに。


「ぅあっ!!」

投げ飛ばされ、うつ伏せに地面に倒れされる少年。

「全く末恐ろしいガキだ!生身で俺達相手にやり合うなんてよ!」

彼の視線の先には、特殊部隊のような恰好の大人達。

「もう構うな。目的物は入手した。撤退だ」

そして、彼らに担がれ連れていかれようとするリサ。

「待……て……」

力なく右手を伸ばすも、届くことはない。

不意に大人の1人が立ち止まり、少年の方へ歩いてきた。

「こういうのは、後々厄介になるからな」

そして、彼の額に銃口が向けられた。

(ああそうか、口封じかよ)

不思議と、少年は恐怖心を抱くことはなかった。

現実離れした状況を脳が正しく認識できていない、からであろうか。

代わりにあったのは、途方もない無力感であった。

この危機的状況を脱する力も、想い人を助け出す力も、その方法を思考する力すら、彼は持ち合わせていなかった。

(畜生、畜生畜生……力が、力さえあれば……)

少年の眼から流れた涙が頬を伝い、左手首に嵌まった銀色の腕輪に零れ落ちる。


瞬間、世界は闇に包まれた。

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